傘下の米Sprintと、T-Mobileの米国法人との合併交渉が破談に終わったことが大きな話題となったソフトバンクグループ。その2018年3月期第2四半期決算は、売上高が前年同期比3.3%増の4兆4111億円、営業利益が35.1%増の8748億円と、こちらも前四半期と同様に増収増益の決算となった。
しかし、国内通信事業に絞った場合、売上高は前年同期比1.6%減の1兆5289億円、営業利益は6.9%減の4339億円と、こちらも引き続き減収減益を記録している。その要因も前期に引き続いて、顧客獲得のための先行投資とのことで、「ソフトバンク光」とのセットによる割引「おうち割光セット」や、ワイモバイルの販売拡大、そしてヤフーの「Yahoo!ショッピング」と連携した販売促進施策などになるという。
そうした効果は確実に表れているようで、主要回線の累計契約数は約38万件増の3278万件、機種変更を含むスマートフォンの累計契約数の純増数は33%増の81万に拡大したとのこと。ソフトバンク光の契約数(「Softbank Air」を含む)も、前年同期比61%増の436万に伸びており、顧客基盤が順調に拡大している様子を見て取ることができる。
一方で、気になるのはARPUだ。通信ARPUが220円減の3790円、サービスARPUが10円減の550円と、いずれも減少している。その主因はワイモバイルの契約数拡大と、おうち割光セットの拡大にあるとのことで、好調なワイモバイルへの流出がARPUの大きな引き下げ要因となっていることに間違いはないだろう。MVNOなど他社サービスへの流出を避けるためにも、ワイモバイルの販売強化は今後も避けられないだけに、ヤフーとの連携などグループ全体で売上を高める施策が一層求められることになりそうだ。
国内事業が引き続き厳しい状況にある一方で、ソフトバンクグループの成長を支えているのはSprintと、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの伸びである。中でもSprintに関しては、引き続き大規模なコスト削減を進めたことで、売上高が日本円で前年同期比4.1%増の1兆7933億円、利益が93.3%増の2022億円と、大きく伸びている。
一方で純増数に関しては、ポストペイド契約が前年同期比18万件減の17万件、携帯電話に限っても68万件減の28万件と、大幅に減少しているのが気になる。解約率も1.72%、携帯電話に限った場合でも1.59%と大幅に上昇しており、足元の実績は順調とはいえないようだ。
確かにコスト削減では大きな成果を出しているものの、顧客の信頼を得て反転攻勢に移るには、まだまだ時間がかかるというのが正直な所だ。ソフトバンクグループはT-Mobile米国法人との交渉を打ち切り、Sprint単独での生き残りを明確にしただけに、今後は単独で生き残るための方策が大きく問われることになる。
同社代表取締役社長の孫正義氏は、ARMや、衛星ブロードバンドのOneWebといった、傘下・投資先企業との連携によるIoTやクアッドプレイの強化、そして2.5GHz帯の周波数帯域を多く持つことによる、5Gでの優位性などを打ち出している。しかし、それらはいずれも、実際のサービスに落とし込み、業績に寄与するまでに時間がかかるものばかりだ。危機的状況から抜け出したとはいえ、決して安泰とはいえないSprintだけに、いかに短期間のうちに明確な成長プランを打ち出せるかが勝負の鍵を握るだろう。
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