ドコモの決算は増収減益--MVNOの伸び悩みなどで純増予測は減少へ

 NTTドコモは10月26日、2017年度第2四半期の決算を発表した。営業収益は前年同期比0.5%増の2兆3001億円、営業利益は6.3%減の5488億円と、前四半期に引き続き増収減益の決算となった。

 減益に至った要因としては、やはり前四半期と同様、2016年に償却方法の見直しをした影響が大きいとのこと。同日に実施された決算説明会において、ドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は「償却方法変更の影響がなければ前年と同水準。償却方法変更の利益影響は今年度下期にたくさん出るが、コスト効率化の影響も下期に出る計画だ」と話し、年間目標の達成に向けては順調に推移しているとした。


決算説明会に登壇するNTTドコモの吉澤社長

 今四半期までのコスト効率化実績は330億円。年間目標の900億円に向けてはまだ大きな差があるが、吉澤氏は下期のコスト効率化を多く見積もっているとして、年間目標の達成には自信を示している。


今四半期までのコスト効率化は330億円と、年間目標の900億円からすると少ない額だが、下期のコスト削減を多く見積もっているとのことだ

 償却方法変更の影響を最も大きく受けているのは、主力事業の1つである通信事業。そのため通信事業の業績は、営業収益は前年同期比142億円増の1兆8708億円、営業利益は前年同期比504億円減の4744億円と、やはり増収減益となっている。ただし、償却方法変更の影響を除くと、通信事業の業績は好調だと吉澤氏は話す。

 実際、「ドコモ光」の契約数が400万契約を突破し、ドコモ光ARPUが330円に達するなど、引き続き光通信サービスの伸びが業績をけん引しているほか、「月々サポート」の低減がARPUの伸びに貢献しているとのこと。しかしながら、パケットARPUは2990円と、前年同期比で全く変化がなく伸び悩み傾向が見られるほか、携帯電話契約数も前四半期の5%を下回る、3%の伸びにとどまっている。


ARPUは「ドコモ光」がけん引する形で伸びているが、パケットARPUは横ばいとなるなど、モバイルに関しては伸び悩み傾向にある様子がうかがえる

 しかも、ドコモは今四半期までの業績を踏まえ、携帯電話サービスの純増数予想を年初計画の220万から130万へと大きく引き下げている。その理由について吉澤氏は、「昨年多く出ていたスマートメーターの需要が一巡して落ち着いたのと、MVNOの増加が想定より下回っていることから、見直しを実施した」と答えている。

 その一方で、自社のスマートフォンやタブレットの回線契約は大きく減っているわけではないそうで、「番号ポータビリティでセカンドブランドにある程度数は出ているが、ドコモ光をきっかけにするなどして、新規の契約者も入ってきている」と吉澤氏は話す。また、10月24日に契約数が200万を突破したKDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」に関しても、「ドコモ側からそれらの料金プランのためにポートアウトしているという、顕著な動きは見えない。おそらくKDDIの契約者のプラン変更が大きいのではないか」と答えており、影響は小さいとの認識のようだ。

 同社では今回の決算から、他社の動向に合わせる形で、通常の解約率とは別に、スマートフォンとフィーチャーフォンのみに限定した「ハンドセット解約率」を公表している。今四半期の解約率は0.64%、ハンドセット解約率は0.47%となっており、前年度比でそれぞれ0.06%、0.02%上昇している。


今回の決算より、通常の解約率に加えハンドセット解約率も公表。今四半期のハンドセット解約率は0.47%とのことだ

 一方のスマートライフ領域に関しては、営業収益が前年同期比16億円増の4454億円、営業利益が135億円増の744億円と増収増益となっているものの、スマートライフ事業は減収減益となっている。こちらも全四半期と同様、グループ会社であるD2Cの取引形態変更が主な理由とのこと。ちなみにスマートライフ領域で伸びているのは金融・決済系のサービスであり、取扱高は前年同期比20%増の1兆4900億円、dカードの契約数も1832万、うち「dカードGOLD」の契約数が308万に達するなど、好調なようだ。


金融・決済サービスは順調に伸びており、「dカードGOLD」の契約数は300万を超えたとのこと

 また今回の決算に合わせる形で、ドコモは顧客の利用をサポートする新たな取り組みを発表。ドコモオンラインショップなどにチャットによる顧客のサポートを導入するほか、スマートフォン初心者に向けた「ドコモスマホ教室」の全国展開、そしてインフォメーションセンターにAIを用い、声で話しかけることで目的に合ったオペレーターに接続するなどの仕組みを導入するなどして、顧客サポートの強化を進めるとしている。


チャットやAIの活用など、新しい取り組みによって顧客サポートを強化することも明らかにされた

 そしてもう1つ、顧客還元の一環として、吉澤氏は「docomo with」の対象端末やフィーチャーフォンなど長く利用される傾向にある端末に対し、ケータイ補償サービスの月額料金引き下げを検討していることを明らかにした。具体的な値下げの額や内容についての言及は避けたものの、10月18日に発表されたdocomo withの新機種が発売される前には、詳細を明らかにしたいと話している。

 さらに、株主還元の強化に向け、最大3000億円相当の自己株式取得も明らかにした。同社は2016年も自己株式取得を実施しており、その際4570億円を費やしていることから、金額が少なくなっているとの指摘が記者から挙がったが、吉澤氏は「昨年の自己株式取得は11カ月にわたって実施したが、今年は5〜6カ月くらいの短い期間で実施する」と話し、期間の違いが金額に影響していると説明した。

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