大手キャリアが格安スマホに“逆襲”か--携帯3社の第2四半期決算を読む - (page 2)

KDDIは顧客流出阻止に一定の目途

 KDDIの2018年3月期第2四半期は、売上高が前年同期比5%増の2兆4160億円、営業利益が同1.9%増の5425億円と、こちらも前四半期に続いて増収増益の決算となった。


KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

 同社はここ最近、MVNOなどへの顧客流出を防ぐ施策に非常に力を入れている。UQコミュニケーションズの「UQ mobile」への大幅なテコ入れに加え、2017年はインターネットサービスプロバイダ大手のビッグローブを買収し、「BIGLOBEモバイル」の強化も進めている。

 またメインブランドのauでも、MVNOへの流出防止策として、端末料金を割り引かない代わりに通信料金を安くする「auピタットプラン」「auフラットプラン」を7月より提供。9月からiPhoneも両プランの対象になったことで、その契約数は200万を超えるにまで至っている。またiPhoneユーザーの流入によって、新料金プランのうち料金が高いauフラットプランの契約者比率が24%から38%へと大きく伸び、それがau通信ARPAを前年同期比2.2%の5970円に向上させる要因にもなっているという。


対象にiPhoneが含まれたことを受けて新料金プランの契約数が急増。中でもauフラットプランの選択比率が大幅に伸びているという

 そうした一連の施策が功を奏し、auとMVNOの契約数を含めた「モバイルID数」は、前年同期比1.5%増の2608万へと順調に拡大している。同社代表取締役社長の田中孝司氏も「昨年と比べると減少率は下がっている」と話しており、グループ全体で見ればMVNOなど他社低価格サービスへの流出が減りつつあるようだ。

 もっともauの契約数自体は未だ減少傾向にあり、今四半期では2500万を割り込むなど厳しい状況に変わりはない。この点について田中氏は、「auの契約がグループのMVNOに移っている状況。あまりうれしい内容ではないと思っているが、全体としてのモバイルID数は伸びており、確実に純増数は回復してきたと見ている」と話し、グループ内での顧客移動が主因との見解を示している。他社への顧客流出が抑えられてきたことから、今後は長期利用者優遇プログラムの「au STAR」などによって、au自体の流出を止める施策を強化する考えのようだ。


モバイルID数は拡大する一方、auの契約者数は引き続き減少傾向にある。だがMVNOなどへの流出は一定の歯止めがかかり、現在はグループ内での移行が主となっているようだ

 そしてもう1つ、成長の柱の1つとなっているのがライフデザイン事業で、こちらの伸びも増収増益を継続している大きな要因となっているようだ。実際、au経済圏の流通総額は前年同期比1.5倍の8490億円に達し、auの付加価値ARPAも前年同期比14%増の570円にまで向上している。

 中でも「auスマートパス」「au WALLET」の伸びが、業績向上には大きく寄与しているとのこと。前者は1534万会員(うちauスマートパスプレミアムが200万会員)、後者は2180万枚(うちクレジットカードが280万枚)に達している。今後はEコマース事業の「Wowma!」の拡大によって、さらにライフデザイン事業を拡大していく考えのようだ。


ライフデザイン事業では「auスマートパス」「au WALLET」の拡大が大きく寄与し、拡大を続けているという

 とはいえ、au経済圏はあくまでauユーザーに限られたものであり、UQ mobileやBIGLOBEモバイルなどのグループ内MVNOに、いつ、どのような形でそれらを広げていくかは引き続き課題となっている。顧客流出の“止血”に見通しが立った今後は、収益を引き下げる要因となっている傘下MVNOのユーザーに対し、いかにライフデザイン事業での付加価値を与えて、売上を高められるかが重要になるだろう。

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