昨今は、求人や採用、人材管理など煩雑な人事関連業務の効率化を図るための最新テクノロジ「HRテック(Human Resources Technology)」導入に本腰を入れる企業が増えている。従業員の勤務体系は、これまでにはなかった多様化を見せ、それにともない人事評価や給与計算は複雑化している。同時に、企業間競争で打ち勝つには、いかに優秀な人材を採用、適職に配置し、長く勤務してもらえるかがより重要になっている。
こうした新しい動きに合わせ、従来の人材管理方法が変わりつつあり、企業が生き残るためには、HRテックを取り入れるのは必須という時代を迎えている。
そんな中、オランダのアムステルダムで先日、HRテックのカンファレンス「UNLEASH(前HRテックワールド)」が約5000人という過去最大規模で開催された。3日間の期間中には、タイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたアリアナ・ハフィントン氏をはじめ、約200人ものスピーカーが登壇。エキスポでは、150以上の出展者が最前線のHRテックを披露した。
今回のUNLEASHに設けられたスタートアップゾーンには、50ものスタートアップ企業が勢ぞろいした。中でも特に個性的なサービスを提供する5社を紹介しよう。
人工知能(AI)を搭載したロボットを取り入れ、人材採用の効率化を図るサービス。企業の成功の鍵は「社員」であるという信条のもと、優れた人材を短時間で発見する手助けをする。
まず何百、何千という履歴書を通覧し、募集条件に合った候補者を探し出す。電話を通して面接を行う際には、相手の答えに音声認識(ボイスレコグニション)を用いて対応。仕事の詳細情報も説明する。続いてデジタル面接では、人事担当者が用意した質問に対して、候補者が回答する様子をビデオで撮り、顔認識システムと予測分析を通して、候補者を絞り込む手助けをする。
管理職1人を選ぶ際の候補者の絞り込みに、従来であれば21時間かかっていたところを、VCVを導入すれば45分で終えることができるという。すでにプライスウォーターハウスクーパー、ロレアル パリ、ボストン・コンサルティング・グループといった大手企業が、このシステムを導入しているという。
企業にとっては、離職者や転職者も「財産」であると捉え、企業がこれらの人々を集めてコミュニティを構築・運営することを手助けする、クラウド型のプラットフォーム。人々は社内ニュースやイベントの招待を受け取ったり、Eメールでやりとりしたりと、独自のオンラインコミュニティを通して、以前籍を置いていた勤め先や元同僚とのつながりを確保できる。
いわば「同窓会」ともいえるこのコミュニティは、企業、離職・転職者双方にメリットをもたらす。企業にとっては、他社に移ってからさらに技術や知識に磨きをかけた優秀な元従業員を再度雇用したり、ネットワークを通じて新商品などの情報を拡散し、マーケティングを実施したりできる。以前勤めていた会社や元同僚と連絡を取り合いたいと考える離職・転職者は多く、コミュニティはOB、OG同士で情報交換をしたり、元の職場から求人情報を得たりする場を与えてくれる。
ワークスペースにおけるチャット「Slack」を利用した意識調査ツール。企業と社員による相互理解・貢献を促す。企業文化を数値化することで、従業員の個性と多様性を尊重しつつ、チーム内でどのように協調性を育むかの検討を促したり、心理学者監修のアセスメントで明確になった各人の仕事に対するモチベーションをチームで共有し、共通点、相違点を持つ他の社員とのチームワークを育むのに役立てたりする。
2週間に1度、個人に特化した意識調査を実施すれば、従業員1人1人の「エンプロイー・エンゲージメント」に関するデータをリアルタイムに入手でき、職場における各人の長所に加え、改善点も浮き彫りになる。企業側はそれをもとに、社員に能力を最大限に生かしてもらうためにすべきことを検討、実行する。さらには、さまざまな調査のデータをもとに、機械学習アルゴリズムを利用し、社内で誰が離職しそうかを予測。その理由を明確にすることもできる。
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