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eスポーツがもたらす世界

上床光信(Gzブレイン マーケティングセクションマネージャー)2017年10月24日 10時00分
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 2017年9月19日は、ゲーム史において記憶すべき日となるかもしれません。

 TGS2017(東京ゲームショー2017)の開幕前々日に、ある発表がされました。

 当時のニュースヘッドラインには、「eスポーツに関わる5団体が統合に向けた取り組みを開始」 「2017年内に新団体を設立へ JOCへの加盟を視野に」となっています。

 ここで言う5団体とは、下記の面々で、まさに今のeスポーツ業界に関連する主要団体が一同に会した感があります。

  • 一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)
  • 一般社団法人e-sports促進機構
  • 一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)
  • 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
  • 一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)

 これは、業界を知る人なら「えっ!」と驚いてしまうほどの顔ぶれが、同じ画面に収まっている感じで、奇跡の5ショットといって良いでしょう。

 ポイントになるキーワードは、「日本オリンピック委員会(JOC)への加盟目処として、業界統一の団体設立について協議を進め~」と、「プロライセンス発行」の2つです。

 まず、JOCに加盟するには、“国内にある唯一のスポーツ団体である”という規定を満たす必要があったのですが、今回の取り組みで、業界統一の団体が設立されたあかつきには、2022年アジア競技大会(中国・杭州で開催予定)への派遣が可能になるのです。

 また、その先に予定されている2024年開催のオリンピック(パリで開催予定)においても、eスポーツの競技種目正式採用に向けた検討が進んでいる様子です。

 もし、パリオリンピックで、eスポーツ日本代表が金メダルをとるなんていうことになると、それは大きなムーブメントになることは間違いありません。

 また、「プロライセンス発行」というのは、プロeスポーツプレイヤーの誕生を意味して おり、eスポーツプレイヤーとして食べていけるスターが登場することにより、eスポーツ業界は飛躍的な発展を遂げることが可能になると言われています。

 実は、世界的に見てみると「日本のeスポーツは遅れている」と散々言われてきた経緯があります。

 理由としては、eスポーツが盛り上がっている海外の状況と比較して、日本での大会では、 賞金が少なくなってしまうという点がありました。これは法律的な問題が大きなハードルとなっていた側面があります。

 具体的には下記のような3つの法律があるのです。

  • 刑法(賭博および富くじに関する罪)/法務省
  •  この法律によって、参加者から、高額な賞金を提供するための参加費を集める大会は開催できません。もし、無料参加とし、大会主催者が賞品を提供する場合は問題ありませんが、下記の風営法や景表法で違法行為とされる場合があります。
  • 風営法(風俗営業等の規則および業務の適正化等に関する法律)/警察庁
  •  ゲームセンターと同様の運営と見なされた場合、風営法の対象となるが、その場合、ゲーム の勝敗によって賞品を提供すると、この法律に抵触することになります。大会主催者は賞品提供者と別にするなどで対応できる場合もある。
  • 景表法(不当景品類および不当表示防止法)/消費者庁
  •  景表法では、消費者が適切な商品選びを保証するため、賞品やサービスに過度な景品 (オマケ)を付けられないよう、景品に対して上限が設定されていています。 そのため、1社で開催する有料のイベントや物販のあるイベントで景品を出す場合は上限10 万円。複数の事業者で開催するイベントの場合は上限30万円までと定められているのです。

 従って、ゲームメーカー主催の大会で、ゲームソフトのオマケとして賞金が存在しているように見えるとNGとなります。

 しかし、今回のeスポーツ団体の統合と、その団体が発行する「プロライセンス」によってようやく光明が見えてきたといっていいでしょう。

 プロプレイヤーへの賞金提供というのは、職業としてのプレイに対するものであり、一般消費者への射幸心を煽ることとは別なのだという認識に基づきます。

 「プロライセンス発行」は、賞金総額の上限無しにIPホルダーが直接賞金を出すことに道筋が付くかもしれないという可能性を秘めているのです。

 さらに、それによって実現するかもしれないスタープレイヤーの登場は、ゲーム自体をプレイしない観戦者を増やし、彼らが興味を持つであろうゲームIPの関連商品や派生コンテンツを開拓していくことになります。

 例えば、野球やサッカー、プロレスのファンは必ずしも、プレイヤーやレスラーではありません。

 プロレスや、野球をしなくても、競技場に足を運び、放送を見たり、イベントに参加します。関連グッズや商品も売れていくのです。

 スタープレイヤーが牽引する世界は、ゲームを単にプレイするためのコンテンツから、興行コンテンツとして、ネットにおける放送コンテンツとして、派生商品のコンテンツとして等々、多様な展開を促し、市場の一層の拡大と、それに関わる事業参加者を増加させていくことになるでしょう。

 「eスポーツ元年」という言葉を考える時、脳裏をよぎるのは、「VR元年」です。

 VRヘッドマウントディスプレイは、爆発的に普及した訳ではありませんが、確実に様々な場所でVRが浸透してきました。AR、MR、AIと関連したICT技術というくくりで見ていくとさらにハッキリとした動きを観察できます。

 「eスポーツ」も、気がつけば様々な場所で確実な盛り上がりを見ることになるでしょう。そして、振り向けば、冒頭の2017年9月19日が大きな分岐点になっていたのだと考える日が来るやもしれません。


◇ライタープロフィール
上床光信(うわとこ みつのぶ)
株式会社Gzブレイン マーケティングセクションマネージャー 。「ファミ通ゲーム白書」の編集長として10年間務めた後、現在はエンターテイメントマーケティングのeb-i事業を推進中。 ゲーム業界、エンタメ業界のマーケットアナリストとして業界の前線を走り続けている。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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