Googleは、自社ハードウェアの製造に本気で取り組もうとしている。またしても。
同社は、「Pixel」スマートフォンの開発グループを中心とする「HTC従業員の一部」と、HTCの知的財産権の非独占的ライセンスを獲得した。Googleがソフトウェアとハードウェアの統合に本腰を入れようとしていることを示す動きだ。HTCは、11億ドルを受け取るが、同社ブランドのスマートフォンや、仮想現実(VR)システム「Vive」の製造開発は継続すると語っている。
HTCの一部門の買収というとそれほど大ごとではなさそうだが、Googleは今回の買収によって、社内では実現が難しいサプライチェーン、研究開発、スキルを手に入れることになる。HTCは正式な発表を前に、株式取引をすでに一時停止していた。
この買収劇に、何となく既視感があるとしても当然だろう。Googleは以前にもMotorola Mobilityを125億ドルで買収したあげく、29億1000万ドルでLenovoに売却したことがあるからだ。このときの買収は、ハードウェアのノウハウ獲得も大きな目的だったが、それ以上に、特許訴訟に対する防衛策という面が強かった。
今回は何が違うのだろうか。買収金額が少なく、Win-Winの性質が強いということ以外、筆者にもよく分からない。Googleはおそらく、ハードウェアが自社の人工知能、広告、「Android」にとって重要な意味を持つと認識しているのだろう。Amazonの「Alexa」への羨望もあるのかもしれない。しかし、だからといって、GoogleがHTCをうまく取り込めるとは限らないし、獲得した人材を維持できる保証もない。
Edison Investment ResearchのアナリストRichard Windsor氏は、投資家向けのメモの中で、次のように指摘している。
Googleは、3度まで痛い目に遭いながら、臆する気配もない。4度目が魔法のように成功する可能性は低いだろう。同社の発表では、HTCとの提携によって優秀なエンジニアがGoogleに合流するとされているが、Googleの買収が何を狙ったものかは、今なお、まったく不明だ。
Motorola Mobilityに始まり、Nest、Dropcam(Nestにより買収)と3度繰り返されたハードウェア関連の大型買収に続き、今回が4度目となる。
これまでの買収には、共通点が2つあった。1つ目は、買収されたどの企業も、ハードウェアについてよく理解していない会社に所有されることに対して、大きな不安を感じていたということだ。それが原因で内部抗争が起こってしまい、Googleの強みを生かして各製品の市場シェアを伸ばすことができなかった。2つ目は、どの買収でも実際に利益を得たのは売却された資産の所有者であって、Googleの株主は不利益ばかり被っているということだ。ハードウェアに関する経験の豊富な経営陣がいてさえ、買収した資産が業績に貢献することは少なく、個人的には、Googleの社内にいるだけでハードウェアの優秀な人材がくすぶってしまうのではないか、という印象さえ受けた。
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