HTCの声明を見れば、同社が財政を強化できることを楽観しているのは、明白だ。HTCの最高経営責任者(CEO)、Cher Wang氏は次のように語っている。
このたびの合意は、長年にわたる両社間のパートナーシップを次の段階に進める輝かしい一歩であり、Googleのハードウェア事業強化を実現するとともに、HTCのスマートフォン事業とViveの仮想現実事業における継続的なイノベーションを約束するものだ。
HTCとGoogleは、これまでも強力な提携関係を続けてきた。HTCは今もGoogle Pixelシリーズのサプライヤーだ。だが、不確かな点もある。HTCが、Googleのサービスを世に示すデバイスとして、今後もハイエンドのスマートフォンを提供し続けられるかどうかということだ。HTCの売り上げは、2011年に最高を記録して以来、下降の一途をたどっている。
総合すると、GoogleはHTCに関しても問題を抱えることになる可能性がある。今回もまた、Googleは主要なハードウェアパートナーを財政面で支援する形になりつつある。
HTCのPixelチーム買収によるプラスマイナスをまとめると、以下のようになるだろう。
買収によるプラス面
- HTCは、サプライチェーンと製造に関する専門知識を有している。HTCは、もともと第三者委託製造業者であり、「Google Home」など他の製品ラインを強化するノウハウもあるはずだ。Nestに関しても、十分な役割を果たす可能性がある。
- Googleは知的財産、HTCの従業員、新しいスキルを獲得しつつ、提携関係を維持できる。
- 買収金額はそれほど悪くない。Googleが有力なハードウェア企業を目指そうとしているのであれば、いずれにせよ、それだけでHTC買収相当の額を費やさなければならなかったはずと言えるだろう。
- GoogleはAndroidの支配力を強化できる。確かに、Lenovo、Nokia、HTCはAndroidの開発を続け、過剰なカスタマイズは控えると約束しているが、最大メーカーであるサムスンはその流れに乗っていない。
買収によるマイナス面
- HTCは、有利な立場でGoogleに売却を持ちかけているわけではない。HTCのウェアラブル戦略は、成功しているとは言いがたい。HTC ViveはVR分野では有望だが、図体が大きい。そして、HTCはスマートフォンでも最近は後れをとっている。
- Googleは、HTCの買収で自社にとって最も重要なものを救い出せるかもしれないが、長期的に見ればパートナーを1社失う可能性がある。
- Googleは、Motorolaをめぐる経緯と同じことを繰り返す可能性がある。HTCを真の意味で生かすには、文化的なギャップを埋める必要がある。Motorolaを生かしきれなかったことを考えれば、HTCでうまくいくかどうかは、不透明だ。
- Googleのコアコンピタンスとして挙げられるのは、広告、人工知能、コンピューティングの規模だが、HTCが実際にどれほどのイノベーションをGoogleにもたらすのか、定かではない。HTCが獲得した資産だけにパートナーの選択肢が限られてしまえば、Pixelの設計も制限されてしまう恐れがある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。