動画マーケティングは、日本が世界をリードできる--ブライトコーブ北庄司氏に聞く

 動画配信プラットフォーム大手のBrightcoveは、デジタルメディア、デジタルマーケティングにおける動画利活用の最新動向を紹介するカンファレンス「Brightcove PLAY」を米国ボストンと東京で相次いで開催した。

 Brightcove PLAYは、2011年から米国ボストンで開催されているイベントで、東京では2014年から開催。動画領域だけにフォーカスしたイベントはグローバルでも珍しいのだという。イベントの基調講演では、ブライトコーブの今後の展開などについて紹介されたほか、動画テクノロジを開発するベンダー企業や広告主企業、メディア企業などさまざまなゲストスピーカーが、国内外で話題になっている動画コンテンツビジネス、動画マーケティングを巡る数多くのテーマで、講演やパネルディスカッションを展開した。

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ブライトコーブのシニアディレクターである北庄司英雄氏

 ビジネスにおける動画活用を巡っては、北米市場が日本よりエコシステムの構築において大きく進んでおり、最近では日本企業がボストン開催のイベントに参加して情報収集を積極的にするケースも増えてきているのだという。では、2017年のBrightcove PLAYでは、ビジネスにおける動画活用についてどのようなトピックスが語られたのだろうか。ブライトコーブのシニア セールス ディレクターである北庄司英雄氏に話を聞いた。

動画ビジネスを巡る3つのマニフェスト

――Brightcove PLAYで行われた基調講演や各セッションでは、どのようなメッセージを打ち出していたのでしょうか。

 動画ビジネスを展開するメディア企業に向けたメッセージとして、3つのマニフェスト(公約)を打ち出しました。ひとつは、パブリッシャが視聴者に提供するユーザーエクスペリエンスを劇的に向上させること。ふたつめは、オンライン動画から得られる潜在的売上を50%引き上げること。そして最後は、オンライン動画の運営と配信に費やす総コストを半減させることです。

 このマニフェストはブライトコーブの製品戦略を表現したもので、今後はこのマニフェストに沿った新たな製品やソリューションを打ち出していくことになるでしょう。この戦略は北米だけでなく日本でも展開しています。

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米国ボストンで5月に開催されたBrightcove PLAYの模様

 一方で、デジタルマーケティングを巡っては“動画を活用する目的は何か”を語るシーンが多い印象でした。つまり、マーケティング領域において動画を活用する幅は増えており、ただ動画を公開して視聴させておけばよかったという時代から大きく転換しているということ。動画を視聴してもらった次のステップとして何が必要かを考える必要があるということです。エンゲージメント、アナリティクス、ソーシャルとの連携、セキュリティというテーマで動画の利活用を考えていく必要性を訴えました。

 この考え方は日本でも徐々に浸透してきているものの、北米市場ではデジタルマーケティングの組織作りや動画マーケティングを巡る運用体制の構築が大きく進んでいるので、市場からのフィードバックを受けながらプロダクト開発を展開していく予定です。

 また、動画活用シーンのトレンドのひとつとして、ステークホルダーや企業組織におけるイーラーニングやトレーニングといったインターナルでの活用が注目されていたのも印象的でした。たとえば、社内の研修や情報共有のための動画活用、販売代理店やフランチャイズに向けたトレーニングといったものですね。企業と従業員のエンゲージメントの構築や、業務生産性を高めるための“エンプロイ・ジャーニー”を考える重要性が提言されていました。

 そして、テクノロジ領域で注目されていたのは、ライブ配信の活用ですね。メディア企業はもちろんですが、一般企業でもライブ配信をマーケティングやインターナルに活用するという事例が増えてきたのが印象的でした。

メディア企業の動画ビジネスが直面する課題

――メディア企業に向けたマニフェストは非常にチャレンジングな印象を受けましたが、こうしたマニフェストの裏にはブライトコーブが感じている課題があるのではと思います。近年は、視聴環境の充実化などを背景に、テレビ局などのマスメディアがネット動画を積極的に活用するようになってきました。そうした状況で、日本でのビジネス展開にはどのような課題が内在していると考えますか。

 一言でいうと、メディア企業には“自前で作りたい”という気質が北米市場と比べて強いというのが大きな課題ではないかと思います。つまり、大手メディア企業のプラットフォームはSIer企業が引き受けていることが多く、動画配信の環境も基本的にはオンプレミスで構築していくというケースが多いということです。こうした商習慣に、日本法人としてどのようにアプローチしていくべきかは考えるべきではないかと思います。

――これはメディア企業に限らず、多くの日本企業は資産である情報やコンテンツをサードパーティに預けることに、昔から慎重な姿勢です。そういう意味では、“セキュリティ面を担保して質の高いユーザー体験を提供し、収益を最大化させる”というメッセージを理解してもらうのは、大きな課題ではないかと思います。

 そうですね。日本のビジネスは“オセロゲーム”のような性格を持っていて、どこかの企業が採用すると業界全体に導入が一気に進むという傾向があります。メディア業界を見てみても、デジタルに力を入れてサードパーティのクラウドソリューションを積極的に取り入れている企業もあれば、そうではない企業もあるという二極化の状態にあります。まずはブライトコーブのマニフェストに共感してくださった企業と協業しながら、業界全体にマニフェストの価値を理解してもらうことが重要だと思います。

 加えて、実際のところ自前の環境ではサービスを維持しきれなくなってきているという実態も、私たちのビジネスを後押しするのではないかと思います。最近では、配信先となるデバイスの多様化が進み、それに伴って通信環境も複雑化している。そして何よりも動画を視聴するユーザー数や動画再生のセッション数が急増しているわけです。

 こうした状況において、安定的な動画配信を企業が自分たちだけで維持していくのはコスト面、リソース面から困難になっていくのではないでしょうか。今回マニフェストが作られた背景には、こうしたメディアビジネスが将来直面する課題があるのです。

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