Appleは秋に正式版をリリースするiOS 11で、同社の決済サービスであるApple Payを拡張し、個人間送金をサポートする。そこで登場するのが「Apple Pay Cash」と、それを貯めておける「Apple Pay Cash Card」だ。
ていねいに読み解いていけば、それが真新しいものでないことは分かるが、AppleがiPhoneユーザーに対して、アプリ不用でこのサービスを提供することの意味を考えた方が良いかもしれない。
前述の通り、Apple Pay Cashは、iOS 11で拡張されるモバイル決済サービス、Apple Payの新機能だ。この機能を用いると、iMessageを通じて、他のiOS 11ユーザーに対して送金を行えるようになる。
モバイル個人間送金は、PayPalやその傘下のVenmo、Square Cash、銀行系のChase QuickPayなど、既にいくつかのサービスが揃っており、またFacebook MessengerやSnapchatなどのコミュニケーションサービスでも、個人間送金のサービスを利用することができる。
個人間送金の使用機会は少なくない。例えばレストランで、たいていキャッシュを持ち歩いていない人に出くわす。そういう人が代表してカードで支払ったとき、割り勘分をスマホの個人間送金で渡す、というのは日常茶飯事だ。
これらのサービスに、銀行のチェッキングアカウント(当座預金口座)を登録しておけば、送金時の手数料は無料だ。クレジットカードでの送金の場合は3%程度の手数料が必要となる。これは現在の金融システム上の話なので、Apple Pay Cashによる送金も、他のサービスと同等となる。
Apple Pay Cashは、iMessageやSiriから相手にいくら送るかを指定すれば、簡単に個人間送金を済ませることができる。iPhoneやiPadさえ使っていれば、同じ個人間送金のアプリを持っていなくてもすぐに送金できるため、iPhoneユーザー間の利便性は他のサービスよりも飛躍的に高まることが想定される。
加えて、Apple Payの利用には、Touch IDによる認証や、Apple Watchの装着とロック解除という本人確認が条件となっている。そのため、こうした認証なしにアプリでの送金が行えない点は、他のサービスと比較して高いセキュリティを実現している。
もちろん、Androidユーザー向けにiMessageを送ることはできないため、Apple Pay Cashによる送金も不可能だ。Appleがこのプラットホームの断絶をどうとらえるのか、あるいはなんらかの判断を下す必要性が出てくると考えられる。
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