家電ベンチャーのUPQ(アップ・キュー)とDMM.makeが販売した4Kディスプレイの画面切り替え速度である“リフレッシュレート”の誤表記をめぐり、UPQに対する不満・批判の声が続いている。
UPQは4月12日に「Q-display 4K50」「Q-display 4K50X」「Q-display 4K65 Limited model 2016/17」の3製品について、「UPQディスプレイ製品3機種のリフレッシュレート表記の誤りについてのお詫びとお知らせ」というニュースリリースを出した。
これまでは「120Hz駆動」と説明していたが、正しくは約半分の「60Hz駆動」だったという。これに対し、多くの不満や批判が起きているのは、3つの大きな理由があると考える。
一つ目の理由はDMM.makeがUPQから調達し、自社ブランドとして販売した同一製品(DME-4K50D、DME-4K65D)については返品を受け付けているにもかかわらず、UPQが販売する製品に関しては返品を受け付けず、Amazonギフト券を2000円分をお詫びとして配付するだけにとどまっていることだ。
DMM.makeが販売した製品はUPQが供給しており、ハードウェア仕様が同一であることに加え、UPQが”誤記”としたカタログ表記もレイアウトを除きほぼ共通だった。おそらく、DMM.makeのカタログやウェブサイトでの記述も、UPQ側から提供されたものだったのだろう。
ニュースリリースには詳細が出ていないが、DMM.makeが返品受け付けを表明しているのは、消費者に対する優良誤認表示(実際の製品よりも優れていると表記し、購買時の判断を誤認識させる表示のこと)を認めたためと考えられる。
すなわち、まったく同じ製品を、同じ優良誤認表示の元に購入したにもかかわらず、選んだブランドによって返品できる消費者と、返品できない消費者が生まれることになる。返品の法的根拠などはともかく、機能、性能を誤認させた可能性が高いのであれば、購入目的を達成できない可能性がある。
”誤記”とする内容にもよるが、今回の場合は機能面での明らかな違いが存在するため、不満・批判が集まるのも当然と言えよう。
2つ目は、誤記であるとされるQ-displayの倍速表示機能が、UPQの言うような「製造委託先との連携不足」とは考えにくいことだ。UPQは製造委託先が急に変更となったことで仕様漏れがあったと説明している。しかし詳細は後述するが、いくら人的にも資金的にもリソースが不足しがちなハードウェアスタートアップだったとしても、カタログで大きくうたうような重要な機能を、まったく確認・テストすることなく検収することは、一般的にはあり得ないからだ。
3つ目はUPQが優良誤認を疑われる表記を行ったのは、今回の事例が最初ではないことだ。小さなメーカーが初めて躓いたミスという例ではなく、何度も繰り返されており、返品対応を行わないことも含めて不満の声を増幅している。筆者が知る限りの事例で言うと、スマートフォン「UPQ Phone A01」が技術基準適合認定取得ミスで回収となったほか、同製品のCPU動作周波数をより高い数字に誤記していた件がある。
さらにスマートフォンの後継機種「UPQ Phone A01X」では充電中にバッテリの発火事故を起こしているが、こちらも消費者に対する告知をいまだに行っていない。発火事故は2016年9月のことだが、11月にQ-displayの発表会において記者から質問され「調査中」と応じ、後継製品の「UPQ Phone A02」の発売の延期に至っているものの、いまだ公式な見解は示されていない。
UPQが小さなスタートアップ企業であることは多くの消費者が知っている。しかし、一方で製品を開発・販売する企業である限り、自らが扱う製品には責任が伴う。その責任の大きさが、開発・販売する企業の大きさとは無関係であることは言うまでもない。責任とリスクが伴うからこそ、そこには成功・成長のチャンスがある。
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