パナソニック、ビジネスイノベーション本部新設--IoTやAIの新規事業を創出

パナソニックは約100年前にアントレプレナーが起業した

 パナソニックは、同社グループのR&D戦略について説明。4月1日付けで、本社部門にビ ジネスイノベーション本部を新設し、新たなビジネスモデル創出に向けた技術開発や人材育成を推進するために「全社テーマ」と呼ぶ考え方を導入する姿勢を明らかにした。

パナソニック 代表取締役専務兼ビジネスイノベーション本部本部長の宮部義幸氏
パナソニック 代表取締役専務兼ビジネスイノベーション本部本部長の宮部義幸氏

 同本部の本部長には、技術部門を統括する代表取締役専務の宮部義幸氏が就任するとともに、副本部長には、前SAPジャパンのバイスプレジデントだった馬場渉氏が同日付けで就任。馬場氏は、シリコンバレーに常駐し、ビジネスイノベーションを推進する中核的な役割を果たすことになる。

 また、AI技術者を3年後には300人体制に、5年後には1000人体制に拡大する計画も明らかにした。

 パナソニックの宮部氏は、「2012年にカンパニー制の導入に伴って、技術部門の前線化を図り、4つのカンパニーに技術本部を設置。カンパニーごとに既存の事業の延長線上で技術開発を推進してきた。それに伴い、本社部門においては、カンパニーだけではできない技術開発や、非連続な技術、新規事業分野に求められる技術を開発してきた。だが、昨今では、既存技術の延長線上の取り組みにおける技術開発だけでは、成長を担保できない。今後の成長エンジンとなる新事業モデルの仮説を自ら構築し、リソースを集めて挑戦する仕組みと体制を本社主導で整備する必要が出てきた。ビジネスイノベーション本部では、顧客との共創や、オープンイノベーションなどを取り込みながら、モノ中心の事業開発ではなく、サービス中心の新規事業およびIoTやAI技術に基づく新規事業を創出する」と位置づけた。


研究開発における役割分担の考え方

 ビジネスイノベーション本部傘下の組織は、サービス中心の事業化プロジェクトの起案および推進や、若手人材育成プログラム「NEO」を運営する「プロジェクト推進室」のほか、機器をネットにつなげ、顧客に直結するとともに、モノとモノをつなげることで新たな価値を創造と事業革新を行う「IoT事業推進室」、AI技術やデータ解析によって、新たなソリューション事業を創出し、社会や生活の様々な課題解決に生かし、よりよいくらしを創造するために具体的なプロジェクトを推進する「AIソリューションセンター」で構成する。

 また、ビジネスイノベーション本部は、「全社テーマ」の考え方を導入。モノ売りではないサービス中心の事業や、既存事業に対しては破壊的となる技術に基づく新たな事業の創出、複数のカンパニー間での連携が必要な事業などを設定。「近々、2つのテーマで発表ができると考えている。現在、ハードウェアの販売によるビジネスを、当社がハードウェアを所有したままで提供し、それを活用することで便益を提供するものを考えている。テクノロジーイノベーションだけでなく、ビジネスモデルイノベーションの取り組みが中心になり、リソースを集中した骨太の技術開発を行う」(宮部氏)とした。

 さらに、「新規事業というと、数億円や数10億円規模で成功と判断するものが多いが、ビジネスイノベーション本部で創出する事業は、100億円以上の規模を目指すビジネスであり、将来的には事業部と同等の事業規模を想定できるものとする。研究所と異なるのは、本部自らが売上げを立てる役割を持っていることであり、事業立ち上げに専念する組織になる」と述べた。

 ビジネスイノベーション本部が取り組む若手人材育成プログラムのNEOは、「Next Entrepreneurs Opportunity」の頭文字を取ったもので、「約100年前に、アントレプレナーが起業したパナソニックは、いまでは大規模な会社になった。そのため、社員の間には、創業に取り組むという意識が薄れている。次の100年に向けて、創造する能力を持った人を多く育成する役割を担うのがNEOとなる。人材を集めて、機会を与えて、社外のリソースを活用しながら、人材を育成していく」とし、「かつての新人歌手発掘番組の『スター誕生』のように、歌を聞いてみたら、別の曲調の楽曲の方があっているといったことをアドバイスするように、才能を生かせるように支援することも行っていきたい」と比喩。新たな領域や新たなビジネスモデルに挑戦ができる次世代の社内起業家を育成する考えを示した。

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