パナソニックにとって、今後の重点分野となるAIの強化については、大阪大学と共同講座を開設して、社内のデジタル系技術者を育成。さらに、新卒採用においては、AIを特別枠として設置し、4月からその1期生が入社していることを明らかにした。
宮部氏は「現在パナソニックには、デジタル系技術者が数千人規模で在籍している。この技術者は、AIと近いところにいる技術者とも言える。他の製造業では、機械系エンジニアや化学系エンジニアが多く、その点では状況が大きく異なり優位な立場にある。外部人材の登用は必要だが、社内の技術者をAI分野に取り込めると考えている。一方で、新卒のAI技術者を積極的に採用していく。これは、現在訪れている第3次AIブームに対するネイティブ人材の確保が大切だと考えているからだ」などとした。
パナソニックでは、3年後にはAI技術者を300人に拡大。さらに5年以内には1000人規模に拡大する計画だ。
またAI関連では、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と連携し、「パナソニック-産総研 先進型AI連携研究ラボ」を設立。先進AI技術の事業化適用を検討するほか、大学で教鞭を執りながら、パナソニックの客員総括主任技師として招聘するクロスアポンイトメント制度を初めて採用。立命館大学情報理工学部の谷口忠大准教授を招聘し、ソリューション事業の開発などを加速する。
パナソニックは、10年後の未来を見据えて、より良いくらしと社会の実現を目指し、さまざまな領域における研究開発や新規事業創出に取り組む「技術10年ビション」を打ち出している。
ここでは、AI、センシング、UI/UXによる「IoT/ロボティクス領域」と、蓄電、水素などによる「エネルギー領域」を、2つの重点領域として取り組んでいくことになる。
宮部氏は「1980年代までの電化の時代、1990年以降のデジタル化の時代、2000年以降のインターネット時代から、いまはIoTの時代に変わろうとしている。インターネットの時代は、PCやスマホで人と人がつながったが、IoTの時代はあらゆるモノとモノがつながり、機器同士が連携する。パナソニックにとっては最大のチャンスが訪れている」と発言。すでにIoT時代に向けた活用例として、スマート家電やスマートHEMS、VtoXコミュニケーション、光IDソリューションなどに取り組んでいる例をあげた。
なかでもリーディグプロジェクトとして、家事からの解放を実現する「AI/ロボティクス家電」、事故および渋滞ゼロを目指す「自動運転/コミュータ」、接客品質の向上に貢献する「店舗・接客ソリューション」、労働不足の解消に寄与する「次世代物流・搬送」、快適住空間の創出につなげる「住生活スマート化」を掲げ、これらの経験をもとに、AIやビッグデータを活用した技術を様々な分野へと適用していく考えを示した。
具体的な成果として、ロボット掃除機「RULO」や、セブンドリーマーズラボラトリーズと協業している洗濯物の折りたたみロボットのほか、自動運転コミュータの試作および試験走行、「メガホンヤク」をはじめとする多言語自動翻訳機や、自動精算と袋詰め作業を自動化する完全自動セルフレジ機「レジロボ」などの取り組みについて触れた。
「ロボット掃除機は手探りでゴミを見つけて掃除をする段階だが、より高度なセンサを活用することで進化させたい。また、自動運転コミュータは、すでに48Vの電気で動く小型自動車を試作しており、パナソニックの構内で試験走行を行っている。ディープラーニングによる歩行者検知技術も自動運転コミュータに活用している。これらの成果を、車載システムへの応用のほか、ドローンの自律飛行によるインフラ点検、監視カメラによるセキュリティ強化、ロボットモジュールによる産業ロボットへの活用、掃除ロボットなどのアプライアンス分野への応用など、各事業に広く展開していきたい」(宮部氏)と述べた。
さらに、「同業であるエレクトロニクス企業だけが競合だと考えてはいけない。アマゾンが『Amazon Echo』を開発しているように、異業種の企業がコンペチターになる。これまでの考え方に変化させなくてはならない」とも語った。
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