logo

ポストスマホは「音声」が主役--LINE出澤剛×舛田淳の勝算

藤井涼 (編集部) 渡徳博(カメラマン)2017年04月13日 08時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
LINE

 2011年の東日本大震災をきっかけに生まれたメッセージアプリ「LINE」は、長年にわたり電話とメールが主流だった日本のコミュニケーションスタイルを、わずか数年でガラリと変えた。そして2017年、LINEはAIと音声によって再び人々のコミュニケーションに革命を起こそうとしている。

 同社を率いる代表取締役社長の出澤剛氏、そしてLINEの生みの親でもある取締役 CSMOの舛田淳氏に、コミュニケーションを軸に多角化を続ける「事業」、各サービスの成長にともない急拡大している「組織」について聞いた。また、これまで語られることの少なかった出澤氏の「日常」についても深掘りすることで、LINEのキーマンたちの素顔に迫った。(全3回)。

上場しても「スピードは落ちてない」

――LINEが生まれてから間もなく6年が経とうとしています。現状をどのように評価していますか。

舛田氏 : おかげさまで数億人に利用していただけるコミュニケーションサービスになり、プラットフォームとしてゲームやスタンプなどの事業も生まれました。また、ニュース事業では王者ヤフーの背中が見えるところまで成長できましたし、そのほかの事業も順調に成長しています。これを一言で表すなら「幸運」だなと。努力はしてきましたが、会社全体として運が良かったと思います。

 ただ、我々の経験から痛いほど分かっているのは、こういった幸運はサボればなくなる、変化をし続けなければなくなるということです。ですので、社内で「成長してよかったね」という空気が流れている期間があったかというと、恐らくこの6年間一度もなかったと思います。もちろん、(目標の達成や上場など)イベントごとにみんなで喜びましたが、そのあとみんなの顔を見るとすぐに戦闘モードになっているんですね。経営陣ではなく自分たち自身で、気が緩まないようにしている。次の10年目、20年目に向けて、そこは変わってはいけない精神だと思っています。

――2016年7月には上場も果たしました。社内外で変化や影響はありましたか。

出澤氏 : 変化という意味では、まだ我々が一番弱小な勢力ではありますが、世界的なプレーヤーと同じフィールドで戦える準備ができたと。非常に強いグローバルな企業と戦っていくには、ありとあらゆるリソースが我々には足りない状況でしたが、上場することで資金を調達して、新たな人材が入りやすい状況になってきましたし、日米同時に上場したことでグローバルな企業からもいろいろなオファーをいただけるようになりました。そこが一番大きなメリットというか、我々が得たものだと思います。社内の雰囲気についても舛田が言った通り、みんな高い目標を持っていて、ユーザーに価値を提供したいという思いが強いので、そこまで変わらないですね。

ニューヨークでの上場の様子
ニューヨークでの上場の様子

――上場するとスピード感が失われるのではないかという懸念もありましたが。

出澤氏 : それはないんじゃないかなと思います。往々にしてスピードが遅くなるのは、組織が肥大化する中で、縦割りになったり、官僚主義的になったりすることだと思います。そこは非常に工夫をしていて、まず役職の階層を薄くするために、経営陣、ミドルマネジメント、一般従業員の3レイヤーくらいに分けています。また、プロジェクト単位でチームビルドして、プロジェクトが終わったら解散するというフレキシビリティを担保する組織設計をしているので、スピードが落ちたとは思っていません。逆に、上場準備中のほうがプロセス上の問題で動けないこともあったので、そこから解放されてこの1~3月はサービスのリリースが続いていますし、動きも早くなっているように感じますね。

撤退する事業には「次がある」

――現状、伸びている事業と苦戦している事業をそれぞれ教えてください。

出澤氏 : 2016年に伸びたのはニュースですね。(公式アカウントを開設してニュースを配信できる)アカウントメディアに参画いただけるメディアが増えて、ニュースソースが多様化したことと、LINEに追加したニュースタブがかなりうまくいっていて、ユーザーからも非常に好評です。また、「LINE Pay」は1000万アカウントを超えましたし、「LINEモバイル」はリアル店舗も順調に立ち上がっています。

2月にLINEアプリを大幅刷新して「ニュース」タブを新設
2月にLINEアプリを大幅刷新して「ニュース」タブを新設

舛田氏 : 上手くいかなかった事業はもう整理をしています。我々は判断が早い会社なので、この方向じゃないなと思ったら閉じるようにしています。ただ、注意してみていただくと分かると思うのですが、閉じたサービスの中で何もアクションをしなかったものはないんです。たとえば、フードデリバリーサービスの「LINE WOW」を閉じましたが、その領域を諦めたわけではなく、次に出前館という業界ナンバーワンの会社の筆頭株主になりました。また、過去には「LINE KIDS動画」というサービスがありましたが、そのチームが次に進んだのが「LINE LIVE」です。

 実は終了するプロジェクトには、その理由と次のアクションが社内では走っているんです。1つ1つチャレンジして検証を進めるのが我々のやり方で、大きくどーんということはそこまでないですね。たとえば、LINEモバイルも最初から全国に店を開いたらいいじゃないかというお声もいただきましたが、やはり大事なのはそのサービスがユーザーニーズと合致しているかどうかです。合致していることが確認できれば、いつも通りアクセルを踏みますし、そのアプローチが違うならまた次のアプローチに切り替えるというのが、我々のある種ものを作っていく時のルールになっていますね。

――各事業の進捗も聞かせてください。LINEモバイルは、3月から全国の店舗展開やテレビCMを開始しました。“コミュニケーション”に続き、“通信”の領域もシェアを獲りにいくフェーズに入ったということでしょうか。

LINEモバイルではIoTを見据えていると舛田氏
LINEモバイルではIoTを見据えていると舛田氏

舛田氏 : 「なぜ、LINEがモバイル事業なのか」というご質問をいまだにいただきますが、我々はスマートフォンで生まれたサービスで、スマートフォンによって成長してきました。ただ、日本におけるスマートフォンの比率は徐々に増えてはいるものの、まだまだ低い。私どもとしては、スマホユーザーが増えていけさえすれば、ユーザーに価値のある体験を提供できると思っています。

 もう少し広い視点でみると、我々は「Closing the distance」というミッションを掲げていて、“人ともの”をつなぐと言っているんです。IoTの領域ですね。ここを考えると、当然そこはWi-Fiだけでは普及しきらないですし、そもそもWi-Fiが家に飛んでいるかどうかも分からないという方も非常にたくさんいる。その中で、IoT領域においてどのような形でLTEを普及させていくか。そういった観点から、LINEにとってモバイル事業は非常に重要な位置づけだと思っています。

――続いて、モバイル決済サービスの「LINE Pay」について。日本で資金移動業者が送金サービスを提供するには、送り手と受け取り手の双方が免許証などで本人確認をしなければならず、友人間などで気軽に送金するには適していません。この状況をどう考えますか。

-PR-企画特集