1998年の創業から18年経った今もなお、競争の激しいインターネット業界で第一線を走り続けるサイバーエージェント。その創業者である藤田晋氏とは、どのような人物なのか。動画に舵を切った「事業」、成長しつづける「組織」、そして余暇を全力で楽しむ「ライフスタイル」を深掘りすることで、同氏の素顔に迫る(全3回)。
第1回は、動画に焦点を当てた「事業」だ。同社は2016年4月に、テレビ朝日とタッグを組み、巨額の資金を投じてネットテレビ局「AbemaTV(アベマTV)」を開局した。生放送を含む全24チャンネルの番組を、24時間すべて無料で視聴できるサービスだ。会員登録は不要で、アプリを立ち上げるだけで幅広い番組を“受け身”で視聴できる体験は、まさに「スマートデバイス向けのテレビ」と言えるだろう。
ただし、サイバーエージェントの動画事業は挫折の連続だった。2002年にメールで映像や写真を送れる「メールビジョン」を、2006年に動画共有サービス「Ameba Vision」を開始したが、いずれもユーザーが思うように伸びず撤退している。まさに“三度目の正直”となる、AbemaTVにかける思いを藤田氏に聞いた。
創業したころからメディア企業になりたいと思っていて、最終的には動画が本命になるという思いがありました。過去にもメールビジョンやAmeba Visionなど、何度も動画にチャレンジしてきましたが、(スマホ普及や動画サービスの浸透によって)「ここが勝負どころだ」と思い、AbemaTVに賭けたということです。
「Netflix」が成功していると認識している人が多いですが、あれはどちらかというとテレビにコンテンツを映すもので、(物理的なテレビの)リモコンの中央に専用ボタンを置いたことでうまくいったと思っています。それ以外で成功した動画サービスは、「YouTube」や「ニコニコ動画」くらいしかありません。
「WOWOW」や「スカパー!」もそうですが、これまでの動画事業はテレビにいかに映像を映すかという競争でしたが、その潮目が変わろうとしています。その中でAbemaTVでは、人々がテレビではなくスマホやノートPCなどで動画を見るという方に賭けました。
メディア事業では、いかに収益をあげるかではなく、いかに多くの視聴者を持っているか、社会的な影響力があるかというところが本質だと僕は思っています。テレビ局であれば、視聴率を一番持っているところが偉いし、力もあるじゃないですか。出版社であればナンバーワンの雑誌を持っているところです。
(AbemaTVを広告による)無料モデルにしたのもマスを取りにいくためです。無料にするからには相当なユーザー数がいないと広告モデルが成立しない。我々は広告会社なのでそこは十分に理解しており、必然的にマスメディアを取りにいくということです。ネットでマスメディアというと笑われるし、オンデマンドじゃないというと笑われがちなんですが、昨日今日、この世界で仕事を始めたわけではないので、よく分かったつもりでやっています。
かなりいいですね。日々バンバン伸びています。DAU(デイリーアクティブユーザー)はまだ100万には届いていませんが、そんなに遠くないうちに到達できると思います。100万のDAUがあれば、僕は1000万までもっていける自信がある。そうすると、あとは運用で改善を積み重ねて伸ばしていけると思っています。
呼びずらいと言われるのはある種の狙いでもあったし、新しいものだという印象はもってもらえたと思います。AbemaTVを準備し始めたころは、ブログが結構古いものになっていて、Amebaでも新しいサービスがしばらく出ていなかったので、(「Ameba」という名称自体に)ちょっと古いイメージがあるんじゃないかという懸念があったということもあります。ただ、私のブログにも書きましたけど、本当に呼びずらいので、半分後悔してます(笑)。
最初に聞いたときはかっこよくない会社名やサービス名でも、突き抜けるとその言葉が独り歩きして逆にオシャレに感じることもありますよね。その分、ハードルを上げちゃったかなとも思いますが。名前については正直ずっと悩んでいたのですが、正しかったかどうかは、これから分かるのではないでしょうか。
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