プレミアムインタビュー

ポストスマホは「音声」が主役--LINE出澤剛×舛田淳の勝算 - (page 2)

舛田氏 : まず、我々が考えているのは、スマートフォン上のウォレット(財布)になることです。そのためには、ユーザーのお金とつながっていなければいけませんので、クレジットカードやプリペイドカード、銀行などとの連携や整備に時間をかけてきました。入金があれば出口が必要ですので、2016年の後半からはコンビニと協力して、いろいろなところで(プリペイド形式の)「LINE Pay カード」によるオフライン決済を可能にしました。

「LINE Pay カード」
「LINE Pay カード」

 個人間送金もそうした手段の1つだと思っています。個人間送金だけで何かをしようという考えはまったくないんですが、ウォレット機能の1つとして個人間送金や個人と法人間の送金なども視野に入れています。本人確認についても、「ここまでの使い方については認証が必要ですよ。ただ、この使い方については認証は少し軽くできるんじゃないか」といったことを、まさに我々の中で日々検討を進めているところですので、どんどん使いやすい形に変わっていくと思います。サービスのどこでつまづいたか、どこでアクティブになったかという、ユーザーの利用データもかなりの量が溜まってきているので、そこからいろいろな展開を考えています。

ポストスマホは「音声」--LINE流の攻め方

――3月に発表したクラウドAIプラットフォーム「Clova」についても詳しく聞かせて下さい。AI事業への本格参入を決めた狙いは。

出澤氏 : LINEはスマートフォンで大きくなった会社ですが、スマートフォンの“次”を真剣に考えるタイミングにきていると思っています。IoTによってあらゆるものがインターネットにつながり、ディープラーニングから始まるAIも進化しています。その中で、ポストスマホの世界でいうと、次は“音声”がひとつの大きなテーマになるという確信があって、PCのOSやスマートフォンのアプリストアよりも非常に大きいエコシステムが生まれると思っています。それは、「Amazon Echo」や「Google Home」など海外のトレンドを見ていても分かります。

 そこに対して我々もチャレンジするということです。音声の領域では、これまでのインターネットよりも生活に溶け込んでいく、日常生活で普通に会話をする感覚でものとつながります。そういう世界では、ローカルな感覚や言語、コンテンツが重要になりますが、我々は(世界各国でメッセージサービスを展開することで)そこに強みを持っています。社内で議論して、次に挑戦する領域として相応しいだろうと判断し、現在は舛田と慎(同社取締役の慎ジュンホ氏)がリードしてプロジェクトを進めています。

ポストスマホは“音声”が大きなテーマになると出澤氏
ポストスマホは“音声”が大きなテーマになると出澤氏

舛田氏 : 恐らくスマートフォンが1人1台の世界になったからこそ、そこですべてを完結させることが難しくなってくると思うんです。実際、下を向いてスマホをずっと見続けることは生理的に不自然ですよね。情報とインターフェースの関係を考えていくと、ディスプレイやタッチ操作に縛られている世界の次に行く必要があると思います。(音声認識について)すごく原始的なことだと思うんです。声であるとかモーションであるとか、視覚も含めて、そういったところがデバイスとうまくリンクして、いろいろな情報やサービス、コンテンツなどを呼び出せる。そこで重要になるのがコミュニケーションです。

 音声でやり取りするには、コミュニケーションがなければいけませんので、そこはLINEを提供してきた我々の得意分野なんだろうと。そして、音声で検索をしてレコメンドして返すところも、グループのNAVERが10年以上やり続けてきた、ある種のコアテクノロジです。この2つのコアテクノロジと、我々が日本と韓国で大量に保有しているデータを活用して、どのようにAIに学習をさせていくか。たとえば、コマースで取れるデータは確かにマネタイゼーションでいうと金の卵ですが、人はただものを買うだけではありません。環境に溶け合う状態を作り出すにはもっと幅広いデータが必要なのです。データの量と種類に関しては、恐らく我々が日韓ともに1位ですので、非常に強みは出てくると思います。

 そして、もう1つのコンテンツとサービスですが、音声デバイスとして、どういう体験がいいのかという答えはまだ誰も見つけられていません。これを見つけ出すには、クラウド側のAIとつながるサービスやコンテンツが一体でないといけない。我々は、キラーサービスとして日本ではLINE、韓国ではNAVERを持っていますので、音声デバイスが普及していく中で、グッドケースを作り出せるのではないかと思います。ただ、我々はデバイスのプロではありませんので、ソニーやLG、タカラトミー、そして“俺の嫁”(バーチャルホームロボット「Gatebox」)を開発するウィンクルなどの企業とコラボレーションすることで、デバイスからアウトプットまでのユーザー体験を一気通貫で提供できると思います。

バーチャルホームロボット「Gatebox」を買収することを発表
バーチャルホームロボット「Gatebox」を買収することを発表

――お二人は「Amazon Echo」や「Google Home」を実際に使われたのでしょうか。また、その感想も聞かせてください。

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