大手キャリアとの“差”を埋めた「楽天モバイル」の次なる一手

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 振り返ると、2016年は総務省による厳しい指導などを背景に、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアが繰り広げてきた携帯電話市場のシェア争奪戦が沈静化した1年だった。その一方で、世の中に“格安SIM”や“SIMフリースマホ”への理解が浸透してきたことで、後半からはMVNO事業者が展開する“格安スマホ”の勢いが本格化した。

 これまでは、OCNやニフティ、ソネットなど家庭向けインターネットプロバイダがMVNO市場の主なプレイヤーだったところに、LINEなどのインターネット事業者やイオンなどの大手小売店が独自のサービスを打ち出して市場に参入。また大手キャリア傘下のワイモバイルやUQモバイルも格安スマホへの注力に本腰を入れており、競争激化の流れは今後も続くものと思われる。

大尾嘉宏人氏
楽天の通信&メディアカンパニー楽天モバイル事業 担当役員である大尾嘉宏人氏

 そんなMVNO市場で存在感を示しているのが、楽天が手がける「楽天モバイル」だ。楽天の通信&メディアカンパニー 楽天モバイル事業 担当役員である大尾嘉宏人氏に、現状の手応えや今後の戦略を聞いた。

大手キャリアとの“差分”は埋められた

――まずは2016年のMVNO市場を振り返って、市場動向の変化や楽天モバイルの事業進捗などについて聞かせてください。

大尾嘉氏:楽天モバイルは、2016年10月にMMD研究所が発表した、格安SIMサービスの利用動向調査の結果で首位を獲得することができました。本調査結果ではシェアも20%を獲得しており、月間契約純増数も堅調に伸びていることから、強い手応えを感じています。

 MVNO市場全体では、2016年は大きな転換点だったのではないかと思います。1月には5分通話かけ放題サービスを開始して、世の中のMVNOに対する注目がさらに大きくなり、ほぼ同じ時期に大手キャリアに対して総務省が販売方法の規制(いわゆる実質ゼロ円販売の規制)を打ち出した。そこから市場の活性化が一気に進んだのではないかと思います。

 楽天モバイルでは、2015年に端末ラインアップの強化やリアル店舗の展開など、販売チャネルや顧客サポートを強化してきたことを受けて、2016年はこうした販売体制を活かすためにサービス面の拡充を重点的に行ってきました。

コミコミプラン
基本料金、端末代金、5分かけ放題がセットになった「コミコミプラン」

 5分かけ放題、楽天スーパーポイントによる料金支払いへの対応、050データSIMや大容量データプラン、データシェアプランの開始、そして端末、料金プラン、5分かけ放題をセットにしたコミコミプランの開始などですね。MVNO、格安スマホという言葉が一般化したことで、リテラシーの高くないお客さまでも分かりやすいサービスを整えたこと、そして大手キャリアが提供していて楽天モバイルができていなかったサービスを整えたことが大きなポイントだと思います。大手キャリアにサービスの品質でもお客さま満足度でも負けないレベルまで追いつくことができたのではないでしょうか。

 (楽天代表の)三木谷は、「差分+オリジナリティ=勝利」とよく言います。つまり、新たにビジネスを生み出すときには、まずはサービス内容や品質で競合他社との差分(自分たちに足りないもの)を埋める。その上で、お客さまに喜ばれるオリジナリティあるサービスを生み出すことができれば、必ず勝利できるという考えです。楽天モバイルは2016年末までは競合他社(大手キャリア)との差分を埋めるための努力をしてきました。この路線を継続することはもちろんですが、今後は楽天モバイルならではの「オリジナリティ」を追求するフェーズに入っていくと考えています。

――携帯電話市場は飽和しつつある中で、どのような「オリジナリティ」が今後の顧客獲得、シェア拡大に繋がると考えていますか。

大尾嘉氏:誤解のないようお話しますと、オリジナリティを出せばシェアが獲得できるとは考えていません。もちろん、オリジナリティを出すことは大事ですし今後のテーマであることは確かですが、それだけでお客さまが増えるのかと言われれば、そうではないのです。

 これまでの楽天モバイルは、オリジナリティがなくてもお客さまに選んでいただき、市場シェアを伸ばしてきました。それはなぜかと考えると、結局のところは低価格で豊富な端末ラインアップから選べるというコアバリューを維持しながら、お客さまサポートやサービス拡充を地道に続けてきた結果だと思うのです。当たり前のことですが、お客さまに「これはいい」と思われるサービスの本質を真摯に維持していくことが、最も大事ではないかと考えています。

 最近では、業界の構造も変化してきています。これまでは、我々を含むMVNO事業者が格安SIMサービスを展開してきましたが、ここにソフトバンクのワイモバイルや、KDDI系のUQモバイルといったMVNO以外の事業者が参入し、競争環境は複雑になってきている。その中で、とにかく“いいサービスを作る”ことを徹底して続けていくことが重要です。そのためには、無駄なことはしない。お客さまのニーズに応え、お客さまとともに成長することを実直に進めていきたいと考えています。

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