楽天、本社機能の一部をシリコンバレーに移管も検討--2016年度決算は増収減益

 楽天は2月13日、2016年度通期の決算を発表した。連結業績では、売上高が7819億1600万円で前年比で9.6%増、営業利益は779億7700万円(同17.6%減)、純利益は380億100万円(同14.2%減)となった。

楽天代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏
楽天代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏

 セグメント別では、楽天市場などのEC事業を含めたインターネットサービスの売上高が、5605億5500万円と前年度比13.7%増加したものの、積極的な販促活動による費用が増加し、前年度に計上した株式評価益の剥落などにより、セグメント利益は555億6800万円。前年度比で38.9%減と大きく下げた。

 EC事業について同社代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏は、「トップラインは力強く成長している」と強調。楽天市場では、スーパーポイントアッププログラム(SPU)や、ユーザー向け・店舗向けの品質向上施策に注力した結果、購入者数は前年同期比10.1%増、注文件数はリオオリンピックの影響で一時下げたものの、前年同期比で14.7%の伸びを記録。新規・復活購入者数も5.9%増と盛り返しているという。

楽天市場の注文数・購入者数の推移
楽天市場の注文数・購入者数の推移

 C2C事業では、2016年9月に「FRIL」を運営するFablicを買収。スマートフォン向けフリマアプリ「ラクマ」との相乗効果もあり、三木谷氏は「フリルをグループ化した9月以降の伸びがすごい。早く業界1位のメルカリに追いつきたいと思っている」と述べた。

C2C事業は取扱高が急伸
C2C事業は取扱高が急伸

 Amazonやヤフーと比較すると守りの姿勢に見えるEC戦略だが、三木谷氏は「業界リーダーとしての一番重要なミッションは、安心して安全に購入していただくこと」としたうえで、「他社みたいに劇薬を使って顧客を奪い取るのではなく、漢方薬を使って楽天市場の体質改善を図ったうえで、末永く楽天市場を使ってほしい」とした。

 もう一つのセグメントである、楽天カードや楽天銀行、楽天証券などを有するFintech事業では、楽天カード会員数の伸びにともない、ショッピング取扱高やリボ残高が伸長。国内流通総額は5兆円(前年比20.7%増)を突破し流通総額で第3位に浮上。同様の成長率が続いた場合、1位の三菱UFJニコスの年間取扱高5.3兆円を超える可能性が出てくるという。三木谷氏は「楽天カード12年目にして取扱高No.1が見えてきた」と好調さをアピールした。

カード事業の取扱高は業界第3位に浮上
カード事業の取扱高は業界第3位に浮上

 楽天銀行では、ローン残高の伸長にともなう貸出金利息収益の増加や費用効率化により、利益拡大が継続。一方の楽天証券では、市況変動のあおりを受けて、売上高・利益ともに前年度を下回っている。ただし、先述の楽天カード・楽天銀行の好調さもあり、セグメント売上高は2960億6600万円(前年度比7.6%増)、セグメント利益が655億8700万円(同2.6%増)と増収増益となっている。

 海外展開では、戦略を一部見直したことから、現在ではドイツ、フランス、米国にサービスを集約している。その結果、ドイツのマーケットプレイス事業では、1月の流通総額が前年同月比で103%増となったほか、フランスでも会員向けサービス「PRICECLUB」の会員数が前四半期比で95%増加。米国では、ECサービス「Ebates」の流通総額が65億ドルと前年同期比で32.7%の増加となり、黒字化を達成した。

 楽天では、FCバルセロナとのスポンサー契約でブランド力を強化し、Ebates、Viber、Kobo、OverDriveといった海外事業のブランドを統一。Viberでは新CEOを迎え、これまでのコミュニケーションツールに加え、楽天の各サービスのハブになる機能を持たせる予定だという。グローバル規模での合計会員数は11億人となり、流通総額は10.7兆円に達している。同社では、ブランド統合により流通総額30~40兆円を目指す。

楽天の一部本社機能をシリコンバレーに移管

 楽天では、ECやFintech・広告・投資などで得られたビッグデータを活用したテクノロジ面の施策も強化する。パーソナライズされたクーポンの提供や、店舗向けページ診断ツール、ABテスト用のツールなどを提供し、売りやすい・買いやすい機能を拡充。また、チャットボットを使った店舗向けヘルプデスクを用意。エンドユーザー向けにもチャットボットを展開し、チャットや音声認識で購入できるようAI技術の開発を進めるという。

 ベンチャー投資も積極的に実施しており、Pinterestへの出資以降、ライドシェアサービスを提供する数社に出資しているという。また、医療事業参入への足掛かりとして、新しいがん治療法として期待される近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)の商業化を目指す米国ベンチャー企業のAspyrian Therapeuticsに出資。同社の取締役会長に三木谷氏が就任したという。楽天は、Aspyrianとのパートナーシップのもと、医療事業に参入するという。

Aspyrian Therapeuticsに出資
Aspyrian Therapeuticsに出資

 三木谷氏は、米国での展開について「我々の業界はシリコンバレーが中心となってイノベーションが推進している。楽天でも2000人以上を米国で雇用しているが、今後一定の本社機能をシリコンバレーに移すことも考えている」と言及した。

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