楽天は11月10日、2016年度第3四半期決算を発表した。売上収益は1905億円で前年同期比4.2%、為替の調整と証券を除いた売上収益では1987億円と、前年同期比で10.6%増加した。Non-GAAP営業利益は302億円と12.1%のマイナスとなった。なお、1~9月期の連結売上収益は、5593億円と8.7%増加した。
事業別の業績では、国内EC事業が売上収益773億円と、前年同期比で6.7%増。営業利益は、第2四半期のマイナス24.6%からマイナス17.3%に改善した。コミュニケーション&スポーツ、その他インターネットサービスを含めたインターネットセグメントでは、売上収益が1359億円と同8.1%増加。営業利益は、147億円と同25.2%のマイナスだった。そのほか、楽天カードなどのFinTechセグメントでは、売上収益は730億円で前年同期比5.3%増加、営業利益は155億円で2.5%増加した。
楽天市場以外のECサービスでは、ファッション系に強みを持つフリマアプリ「FRIL」を展開するFablicを買収し、楽天が持つフリマアプリ「ラクマ」との連携を強化。楽天副社長執行役員でCFO&CROを務める山田善久氏は、「CtoCではメルカリが先行しているが、比較していいところまで追いついてきている」と評価。また、米国でECサービスを展開するEbatesでは、流通総額が1400億円と前年同期比で27.2%の増加、営業利益も13億700万円と同71.0%の増加になっている。「米国でECをやってきていると自信を持って言える」と山田氏は述べる。
EC事業が回復してきた要因として、トラベル事業が好調だったことに加え、広告プラットフォームの改善による広告収入の伸びがある。前年同期比ごとの伸びでは、2016年9月以降初めてプラスに転じており、多少の“凸凹”はあるものの、今後も広告収入の増加が期待できるという。また、楽天カードや専用アプリからの楽天市場での決済でポイントが増える「SPU(スーパーポイントアップ)プログラム」を展開し、複雑だった各種キャンペーンを一本化。わかりやすくしたことで、新規ユーザーや楽天から離れていたユーザーが回帰している。山田氏は、「三木谷(楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏)の言葉を借りるなら、SPUプログラムは漢方薬のようなもの。じわじわと効果が出てくる」としている。
MVNOサービスの楽天モバイルも順調にユーザー数を増やしている。MMD研究所が2016年9月に実施した利用動向調査では、MVNOにおける楽天モバイルのシェアが20.7%とトップで、2位のOCNモバイルONEの13.5%を大きく引き離している。モバイル事業を統括している楽天副社長執行役員の平井康文氏は、「予想を上回る成長を遂げているが、今の段階では投資フェーズ。来年も投資を継続することで大きなマーケットを獲得したい」と述べた。また、楽天経済圏におけるモバイル事業の立ち位置について、「楽天がエコシステムとして持っているプラットフォームと、スマートデバイスのサンドイッチで、エコシステムのさらなる発展につなげたい」としている。
FinTech関連事業はいずれも好調だ。楽天カードの売上収益は352億円と前年同期比で18.2%の増加、営業利益も77億円と同45.3%増加しており、クレジットカード取り扱い高ランキングで国内3位に順位を上げている。また、楽天銀行も売上収益が165億円と同6.4%の増加、楽天生命も売上収益が81億円と同1.5%増で、堅調に推移している。
楽天代表取締役副会長執行役員でFinTech事業を統括している穂坂雅之氏は「全体的なカード産業は、年5~6%で成長しているが、私たちは際立っている。楽天銀行も、マイナス金利の中、個人ローン残高の収益、カード債券を証券化して商品として販売するなど2本の柱により、マイナス金利でもコストセーブできている」としている。
決算発表会では、記者からは米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏への影響について意見が出た。山田氏は、「超短期的に言えば、大統領選当日のトラフィックが相当落ちた。ユーザーが選挙にくぎ付けになった証だと思う」としたほか、「私がコメントできる立場ではない」としながらも、「新大統領はビジネスマン。ビジネスにとって悪い施策は取らないと思う」と述べた。
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