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AIが「記事」を書く時代--クエリーアイと西日本新聞が語る“文学”の可能性 - (page 2)

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人工知能による文章創作、見えてきた課題と期待

 それぞれのアプローチによって人工知能による文章の創作に挑んだ両名だが、そのクオリティは人が文章を記述した場合と比較してどうだったのだろうか。

 文学を創作したクエリーアイの水野氏は、「喜怒哀楽をはじめとする感情を動かされるレベルの文章までは達していない。身も蓋もない表現をすれば、人工知能は“ただ計算しているだけ”と言える。つまり、人工知能は前の文字から次の文字を推計するという計算を連続的にしているだけで、現実的には何を目指して書いているのかという目的がない状態。人に感動を与える文章を書いているかはわからない」と指摘する。

 たとえば、人が文章を書く場合には、“こういう印象を読み手に与えたい”、“こういう構成にしてオチはこうしよう”といった作り手の意図が頭の中にあったうえで文を連ねていく。人工知能にはそういった発想がないというのだ。

クエリーアイの代表取締役である水野政司氏
クエリーアイの代表取締役である水野政司氏

 「人工知能による文章創作は帰着点がわからないというのは課題。たとえば、ECサイトが売上をアップするための文章を作りたいとする。こちらは最終的に“この商品を買ってください”と結論を書いてほしいのに、人工知能ではそうならないかもしれない。結論は“神のみぞ知る”というのが、人工知能の現実ではないか」(水野氏)。

 一方、メディアが発信する記事において重要なのは、事実の正確性に対する担保だ。西日本新聞社の井上氏が挑戦した人工知能による天気予報記事の自動生成は、データに基づき記事を制作するという天気予報ニュースの特性上、事実の正確性に対する担保は難しくない。では、人工知能による記事制作には応用の可能性があるのだろうか。

 井上氏は、この質問に対して「試合結果など、データがはっきりしているスポーツニュースなどでは可能性があるのではないか。プロスポーツは記者が取材してまとめているので、アマチュアスポーツや学生スポーツのデータを入手して、記事制作を人工知能によってカバーできれば、地域の人にとって価値のあるニュースを、人的コストをかけずに書けるのではないか」とコメント。これまで編集部の記者ではカバーできなかった領域のニュース制作を人工知能によって拡充することで、読者ニーズに応えられるのではという示唆を示した。

人工知能は記事制作を変えることができるのか

 続いて議論のテーマになったのは、人工知能はメディア記者としての役割をどこまで果たせるのかという話題だ。たとえば、CNET Japanのようなニュースサイトに掲載するストレートニュース(企業発表を基に書く記事)は、プレスリリースを基にその内容を記事として執筆し、不明慮な点は企業の広報窓口に問い合わせて詳細を詰めていく。人工知能が進化すると、こうした一連の作業をも任せることができるのではないか。水野氏、井上氏の挑戦を踏まえると、そうした期待感も感じてしまうところだ。

 ただ、井上氏はこうした期待感に対して“記者だからこそできること”、“手間を省くべきところ”を分けて考えるべきだと指摘する。「人が記事を書く理由は、そこに“なぜ?”という視点が入ることではないか。そこは、記事制作において手放したくはない。一方、“なぜ?”が介在しない作業の手間は減らしたほうがいい。残念ながら、今の職場では(企業や団体の)発表文の書き換え作業が非常に多い。その手間を減らせれば、記者がもっと“なぜ?”を考えることに時間を割けるようになるのではないか」(井上氏)。

西日本新聞社編集局経済部記者の井上直樹氏
西日本新聞社編集局経済部記者の井上直樹氏

 メディアの記者が本来行うべきなのは、世の中の動向に興味関心や課題意識を持ち、資料集めや取材をして、集まった情報を基に記者の視点も交えて記事にまとめて世に問うという作業だ。こうした綿密な記事制作の作業は人工知能では不可能であり、知識と経験の蓄積がある記者だからこそできるもの。記者の限られたリソースをこうした本来目指すべき作業に注力させるという点において、人工知能に期待できるのではないだろうか。

 一方で水野氏は、ビジネスの側面から今後の人工知能の可能性について語った。つまり、人工知能のシステムコストと削減できる記者の手間やコストのバランスだ。「人工知能の進化は、記者と同じレベル、小説家と同じレベルに近づこうと、どんどん進んでいくだろう。一方でビジネスとして考えると、その人工知能が導入されて利益が生まれるのかを考えなくてはならない。人工知能のシステムやそれを管理する人材のコストと、記者による記事の制作コストを比較すると、間違いなく人が書いた方が安い。この費用対効果が今後どうなっていくのかに注目したい」(水野氏)。

 とはいえ、古くはコンピュータも普及が拡大したことで、技術革新が進みながら導入コストが急激に下がり、仕事の効率化や人の手間の軽減を実現してきた。また、人型ロボット「Pepper」のように、導入することそのものが宣伝効果を生み出すことも期待できる。人工知能がメディアの記事制作を支援するようになるのは、遠い未来の話ではないのかもしれない。

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