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AIが「記事」を書く時代--クエリーアイと西日本新聞が語る“文学”の可能性

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 膨大なデータを学習させて、さまざまなアウトプットをする人工知能。その多くはマーケティングなどにおける意思決定の補助や、コミュニケーションの創出を目的として活用が模索されているが、もし人工知能を「文章を書く」という創作活動の担い手として活用したら、どうなるのだろうか。

 2月22日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」で行われたパネルディスカッション「人工知能が執筆する『文学』『記事』--機械が学び創作する可能性」では、クエリーアイの代表取締役である水野政司氏と、西日本新聞社編集局経済部記者の井上直樹氏が、人工知能による文章創作の可能性と課題について議論した。モデレータは、CNET Japan 編集長の別井貴志。

パネルディスカッション「人工知能が執筆する『文学』『記事』--機械が学び創作する可能性」
パネルディスカッション「人工知能が執筆する『文学』『記事』--機械が学び創作する可能性」

人工知能によって小説執筆に挑んだクエリーアイ

 まず、両社が人工知能を活用してどのような文章創作に挑んだのかを紹介しよう。人工知能を用いたマーケティング分析や市場予測システムなどを手がけるクエリーアイは、同社が開発した人工知能「零(ゼロ)」に福沢諭吉や新渡戸稲造の作品を学習させ、その経験を元に文章を創作。2016年8月に、人工知能による初の商用出版書籍「賢人降臨」を発売した。

2016年8月にクエリーアイが出版した「賢人降臨」
2016年8月にクエリーアイが出版した「賢人降臨」

 水野氏は、「文章を生成するという実験を繰り返して、最初はちゃらんぽらんなアウトプットしかできなかったが、トライアンドエラーを繰り返す中で“普通の文章”をアウトプットするようになり、本当に驚いた。そこで、“この人工知能が作った文章を世に問うてみよう”と思い、人が編集など一切手を加えない形で出版することにした」と当時を振り返る。「てにをはのおかしなところなども、あえて修正をせずに出版した。“人工知能による創作の現実はこう”というものを見てほしかった」(水野氏)。

 また水野氏は、この挑戦が人工知能ビジネスにどのように活用できるのかという点について、コンテンツマーケティングや広告で使用する文章の自動生成、社内文書の要約やユーザーサポートなど、社内で使うビジネス文書の生成などの開発に応用できるのではないかという見方を提示。特に、マーケティング分析など他のディープラーニング領域との融合により、広告のランディングページに表示させる文言や、ECサイトで顧客属性や嗜好性に合わせて変化させる文言など、マーケティング領域で必要になる文章の自動生成が可能になる点に期待を寄せた。

人工知能による文章生成が商品・サービスを生み出す可能性
人工知能による文章生成が商品・サービスを生み出す可能性
人工知能による文章生成の将来像
人工知能による文章生成の将来像

 「出版物や社内文書などの元データを学習させることで、商品やサービスを生み出せるかもしれない。BtoBの領域ではこの人工知能エンジンを使わせてほしいという要望はきている。今はまだ黎明期だが、将来には人が校正したものと同じレベルで文章を自動生成したり、売上や広告効果など文章成果物の目標に沿った文章を自動生成したりできるのではないか」(水野氏)。

“ロボット記者”に挑戦した西日本新聞社

 一方、西日本新聞社の井上氏は、人工知能によって新聞紙面に掲載する記事の制作に挑戦した。人工知能によるニュース原稿の制作には、米国でAP通信やYahoo!などが取り組んでいるが、井上氏は米国でも使用されている「Wordsmith」と呼ばれる文章自動生成ツールを利用して、天気予報記事の自動生成に挑んだのだという。

 具体的には、記事の元となる文章全体のテンプレートと、気象データの条件に応じて生成する言葉のパターンを気象予報士とともに作成。その上で、日本気象協会が発表する天気予報データをCSV形式でインプットすると、自動的に天気予報の記事を生成してくれる。事前にパターンを入力する作業にかかった時間は、約3日ほどだったという。「1つの記事を生成するのにかかった時間は約1秒。テストでは2地点の記事を生成したが、各地の天気予報記事をすべて生成してもそれほどの時間はかからないのではないか」(井上氏)。

Wordsmithの画面。青字の部分は入力されたデータに応じて表現が自動的に変わる
Wordsmithの画面。青字の部分は入力されたデータに応じて表現が自動的に変わる
データの条件に応じて生成する文章の表現を定義する画面
データの条件に応じて生成する文章の表現を定義する画面

 こうした試みを行った背景について、井上氏は「新聞社では、若手記者が送られてきた情報をパソコンに入力して記事を制作するといった単純作業に毎日追われており、こうした状況をどうにかしたいという課題意識があった。少しでも新しいテクノロジを取り入れて、課題解決の可能性を社内外に示したかった」と説明。実際、紙面上で記事を公開したあとには同業の報道機関などから問合せが寄せられたのだそうだ。

この試みは、西日本新聞の紙面などで紹介した
この試みは、西日本新聞の紙面などで紹介した

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