電通は1月17日、同社およびグループ会社の一部で提供したデジタル広告サービスにおいて、不適切な業務があったとする発表に関して、最終的な調査結果と再発防止策を公表した。
これは、運用型広告などのデジタル広告サービスにおいて、故意または人為的なミスにもとづく広告掲載期間のずれ、未掲出、運用状況や実績に関する虚偽の報告、実態とは異なる請求書による過剰な請求が行われていたとされているもの。2016年9月23日の発表では、予備調査として疑義のある案件が633件、対象となる広告主数は111社、不適切な部分に相当する金額は概算で約2億3000万円と発表していた。
調査は、同社取締役副社長執行役員の中本祥一氏を委員長とし、外部の弁護士を含む全4名で構成する社内調査委員会を設置。社外の公認不正検査士・公認会計士の助言も得つつ、不適切業務の実態把握・検証、原因究明などの再発防止策を進めた。調査の対象案件は、2012年11月1日から2016年7月31日までに提供されたデジタル広告の全件となる約21.4万件に上る。
調査の結果、96の広告主、997件の作業件数において、合計1億1482万円の不適切業務が確認されたという。具体的には、広告主から依頼された出向総量を満たしていなかったにも関わらず、あたかも満たしていたように広告主に報告していたほか、出稿総量は問題なかったものの、日次の実績が広告主の指示と異なっていたため、総量には影響を与えないまま出稿実績の内訳の一部を変更して報告していたという。出向総量を満たしていない過大請求案件は、広告主10社の40件が対象で、総額338万円だったとしている。
また、 出稿総量や出稿実績の運用報告も、クライアントからの要請通り週次・月次単位で実施されていたものの、日次単位の出稿実績を確認しなかったことで、本来掲載すべき日に広告が掲載されたと誤信させていたという。そのほか、運用型デジタル広告の性質上、掲載翌月にならないと請求額が確定しないものを、掲載当月に概算金額を登録し、精算しないまま請求したとしている。
同社では、こうした問題が起きた原因として、各サービスや業務の特性を組織が適切に把握しきれておらず、業務の標準化、職務分離、チェック体制の構築・運用が不十分だったほか、業務上のミスがもたらすオペレーションリスクを組織として認識できていなかったこと、ミスをフォローするフローの標準化などの対応が完全でなかった点を挙げている。
また、急成長している運用型広告において、現場で必要とされるスキルや業務量の変化に対応できず、人的リソースの最適化や研修が十分でなかったとしている。そのほかにも、デジタル化にともなう急速な事業構造の変化の中で、事業拡大と同時に人材の多様化が進んだあまり、業務遂行におけるコミュニケーションギャップが生じ、グループ各社間での連携が十分ではなかったことも指摘した。
再発防止策として、掲載確認を中立的に評価する「オペレーション業務マネジメント室」を取引現場から独立させた上で、同室内に「デジタル確認課」を新設。出向実績に関するレポーティングプロセスの自動化も進めるという。また、サービス範囲や運用条件を明確化した「インターネット広告サービス規約」および申込内容の明確化する「インターネット広告掲載申込書」、申込書からの転記ミスを防ぐオンライン申請システムの導入を実施。「運用型広告業務改革:業務連携の改善」というテーマで、全営業局向けに社内説明会も実施するという。
リスク管理や人員体制については、経験者を中心とした運用型広告サービス関連部署への緊急増員に加え、最適な人員構成や必要な能力を検証した上で、社内異動や中途採用による更なる増員を順次実施する。また、マネジメント職も増員し、ミスをフォローする体制を構築していくという。さらに、経営幹部における国内デジタル広告業務への理解の促進、デジタルグループ連絡会議の定期開催、サービス提供体制の点検と見直し、現場社員がグループを超えて課題と解決策を共有できる仕組みの導入、デジタル人材の育成を図るとしている。
なお、今回の問題の責任を取る形で、関係執行役員や関係社員について、社内規則にのっとり厳正に処分したとしている。
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