銀行には潤沢な資金を持ち、製品は供給が追いつかないほどに売れているAppleには悩みなどなさそうだ。だが、2016年という年に、全く揺るぎないものに見えていたAppleの未来は不透明になってきた。米ZDNetの記事を引用しながら、この1年を振り返ってみたい。
トラブルの兆しは1月にあった。第1四半期(10-12月)の売上高のデータが、iPhoneの販売失速を示したのだ。
まずは、iPhoneの売り上げだ。確かに堅調な、記録的な売上高だが、販売台数は前年同期からゼロ成長で、売り上げの伸びは1%だった。第1四半期はAppleにとって例年、最も力強い四半期だ。同四半期にはiPhoneの新モデル発表とホリデーシーズンがあるからだ。これまでは、同四半期に大きな成長が見られた。
新iPhoneの世界で最初の発売地域に中国を加えてもなお、前年同期の販売台数を上回ることはできなかった。
iPadに至っては、既に悪かった状況は驚くほど悪化した。
iPadの状況はさらに悪い。販売台数は25%も減少し、売上高は21%減だ。ホリデーシーズンを含む四半期にiPadの販売が大きく落ち込んだのは、これで2度目だ。
最初の文鎮化問題は、「エラー53」バグだった。これは、非正規の業者が修理でTouch IDボタンを交換すると、iPhoneが起動しなくなるという深刻な問題だ。Appleは当初、これはバグではなく、ユーザーの安全を守るための機能だと主張した。最終的には、Appleは悪評が立つよりはと方針を変更した。
続いて「1970年1月1日」文鎮化バグが発生した。名称通り、iPhoneの日付を1970年1月1日に設定すると文鎮化するというバグだ。幸い、このバグは簡単に修正でき、Appleは修正パッチをリリースした。
3月には、iPhoneの安価モデル「iPhone SE」が登場した。これは、(金銭的な意味でも物理的な意味でも)ポケットが小さいユーザー向けのデバイスだ。
AppleはなぜiPhone SEを発売する必要があったのだろうか?
アナリストの予測通りにiPhoneの販売が失速するならば、Appleは新規ユーザー獲得のための、より魅力的なデバイスを用意する必要があるだけでなく、そのデバイスはユーザーが「Apple Pay」を使ったり祖母に「Live Photos」を送ったりする習慣を身につけるようになるくらい最先端でなければならない。なぜなら、そうすればユーザーはiPhoneのとりこになり、次もiPhoneを購入することになるからだ。
また、古いデバイスを使っている既存のiPhoneユーザーに、次のデバイスとして販売するチャンスもある。IHSの調査報告によると、現役iPhoneの29%は4インチディスプレイの「iPhone 5」で、23%はさらに古い3.5インチディスプレイのiPhoneという。
ハードウェア仕様の観点から見ると、iPhone SEはかなりお買い得だ。だが、それまでのiPhoneと比較すると、飛びつくユーザーは少なかった。
そして4月、Appleは大きな落ち込みに直面した。13年間続いた成長が突然終わったのだ。
iPhoneの出荷台数は5110万台で、アナリスト予測よりは良かった(アナリスト予測は5070万台だった)。この台数は前期比32%減、前年同期比で16%減だった。第1四半期から第2四半期の販売台数の落ち込みが従来になく大きいことに気づくだろう。iPhoneの新モデル発売の勢いが、以前のようには第2四半期にまで続かなかったことは、新iPhoneが大きなヒットにならなかったことを示している。
その上、iPhoneの平均小売り価格はこの四半期に急落した。前期は690ドルだったものが、641ドルになった。しかもこれは、安価なiPhone SE発売前の話だ。これは消費者がハイエンドで高価格なモデルよりも性能は低くても安価なiPhoneを購入する傾向にあることを示す。
Appleは6月に年次開発者会議WWDCを開催した。Appleはこのイベントで、iOSとmacOSを強く統合していくことを示し、iPhoneを中国の購買者にとってさらに魅力あるものにしてみせた。
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