10月はAppleがMacBook Proのラインアップを更新した月でもある(そしてMicrosoftが思いがけなく同月に発表した「Surface Studio」のせいで影が薄くなった)。最大の新機能は「Touch Bar」だ。
まず、ファンクションキーがなくなり、Touch Barのマルチタッチディスプレイがそれに置き換わった。このTouch Barでツールやショートカットに簡単にアクセスできる。ショートカットは稼働中のアプリによって変わり、ユーザーによるカスタマイズも可能だ。
Touch Barには、ログインと「Apple Pay」での支払い認証で使う「Touch ID」センサも搭載する。Touch IDセンサのために、Appleは「T1」と呼ばれる新しいチップを構築した。このチップはセンサのSecure Enclaveの役割を担う。
Appleはまた、不必要だと見なしたポートの間引きも実施した。残ったのは、4つのThunderbolt 3/USB-Cポートと、ヘッドホンジャックだ。
Thunderbolt 3ポートは40Gbpsのデータ転送速度を持ち、2台の5Kディスプレイの接続が可能で、ドングルを使えばUSB、DisplayPort 1.2、HDMI、VGAとしても機能する(多数のドングルが必要になりそうだ)。USB-Cポートとして機能する場合のデータ転送速度は10Gbpsだ。
AppleはMicrosoftに出し抜かれたような感じだった。
では、私はなぜMicrosoftがAppleを出し抜いたと考えるのだろうか? Appleがイノベーションの方法を知っているのは疑いの余地がないことだが、プロユーザーを見失ったように感じるからだ。
「より薄く、より軽く、より少ないポートに」という方針は、これまでわれわれがAppleに期待してきたこととは合致するが、プロユーザーが求める機能ではない。同様に、Touch Barはもちろん革新的ではあるし、Appleはこの新機能をウェブサイトと製品の外箱でも宣伝しているが、これもまた、プロユーザーが求めるものではない。
一方Microsoftは、Surface StudioでPCのフォームファクタをより便利になるよう少し改善し、クリエイター層を狙った高機能を詰め込んだ。実際、私の知る多くのプロデザイナーは、手持ちの高価なペン対応ディスプレイ(27インチのCintiq製ペンディスプレイは2299ドルする上、これに接続するためのPCが別途必要だ)を28インチのSurface Studioに置き換えられるだろう。その際、手持ちの周辺機器やハードウェアは一切アップグレードする必要がない。
11月に、Donald Trump次期大統領はAppleのCook氏に対して電話で、Appleが製造拠点を米国に移行すれば、それは“本当の成果”になり、そうすれば減税を約束すると告げた。
Cook氏の返答は短く、曖昧だった。
「それは分かっています」
現実的には、工場を米国に移すのはとてつもないタスクだ。
そもそも、Appleは自社でiPhoneを製造しているわけではない。中国企業のFoxconnとPegatronにアウトソーシングしているのだ。これらのメーカーは、中国に6つ、ブラジルに1つある組み立て工場でiPhoneを製造している。過去4四半期以上にわたって、これらの工場では2億1200万台ものiPhoneが製造されてきた。
だが、これは話のほんの一部でしかない。
工場に加えて、サプライチェーンについても考慮しなければならない。Appleは20カ国以上に750社以上のサプライヤーを持つ。これらがiPhone製造に必要な鉱物や部品を製造・供給している。こうしたサプライヤーはおよそ160万人を雇用している。そして、2016年6月の時点で米国に拠点を置くサプライヤーはわずか69社だった。
さらに、これらの組み立て工場とサプライヤーはiPhone製造にかかわっているだけではないことを忘れてはならない。ほとんどが、あらゆる電化製品の製造にかかわっているのだ。
まさに世界規模での製造だ。
シラキュース大学情報学部のJason Dedrick教授によると、工場とサプライヤーを米国に移すと、1台当たりの加工費はこれまでの5ドルより30~40ドル高くなるという。コスト増加の一因は人件費の高さだが、輸送・物流費用がかさむことも原因だ。
この問題がどうなるのかについては、次の1年──あるいは、恐らく次の数年──様子を見る必要があるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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