ジョニー・アイブ(アップル)という何とも気になる存在 - (page 2)

 iPod(2001年)、iPhone(2007年)、iPad(2010年)と比較的短い間隔で新しいジャンルの製品を投入してきたAppleが、2011年以降はApple Watch(2015年)しか新ジャンルの製品を発表していない。そのApple Watchも事業として同社の尺度にあう成功を収めるかどうかはまだわからない。またテレビ関連や自動車関連のように噂だけが流れ続けている取り組みもあるが、これらの製品もしくはサービスが今後日の目をみるかどうかもわからない。サプライチェーンの専門家として知られる実務家のTim Cookには新製品開発は荷が重いことは多くの人が知っているので、その部分の鍵を握るはずのIveに否が応でも関心が集まる、というのは自然な流れかもしれない。

 AppleのトップがCookに「代替わり」して以来、同社が外部に対してだいぶオープンになったというのはよく言われるところ。今回の書籍出版にからめて公開されていた下記の動画やCasa BRUTUSとのインタビューなどもそうしたオープンさの表れのひとつであるのは間違いない。けれども、肝心のIveが「自分たちはこれからどちらに向かおうとしているのか」といったことを口にしたというのは聞いたことがない。Iveに人をやきもきさせるところがあるとすれば、おそらくそのあたりの寡黙さ・不透明さも一因だろう。


「建築関係のプロジェクト」に時間を割くアイブ

 Iveの最近の動静に関して、Appleとかなり近しい関係にあるJohn Gruber(Daring Fireball)がApple社内の情報源から聞いた話として、「Iveはこのところ新社屋や小売店舗といった建築関係のプロジェクトに多くの時間と注意を振り向けている」と直近の記事のなかで記していた。上記の書籍を「Steve Jobsに捧げる」としていたIveが、Jobsの最後の大仕事ともいえる新社屋の完成に力を注いでいる、というのは素直に頷ける話。いっぽう、一部で姿を現しはじめた新たなコンセプトの店舗開発について、Iveがどういう思いで臨んでいるかなどはよくわからない。

 Gruberのこの記事自体は、自分のポッドキャストで一部の聴取者に与えた誤解を解く目的で記されたもの。具体的には、Iveがすでに現役から足を洗う準備を進めており、「Designed by Apple in California」のようなものを出したのもその証左(ある種の置き土産としてつくった)といった見方を否定し、逆にこうした書籍を出せるのはIveがAppleで製品に関する事柄を完全に掌握している証拠などとする自説をGruberは展開している。

 なお、Phil Schiller(Appleの古参幹部)あたりとも行き来のあるGruberでさえIveのことを「謎めいた人物」と記している点も面白い。「Apple社内でもIveと直接仕事をした人間は多くなく、一緒に仕事をしたごく少数の人間もそのことについて語らない。Iveが現在どんな役割を担っているかについて、私が耳にしたことはほぼすべて又聞き」などとGruberは書いているが、そうした謎めいた人物が、世界一時価総額の高い企業の要職についているというのもまた不思議なことと感じられる。

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