発想を変えること(thinking different)は実際にはとても簡単なことだ、とJony Ive氏は言う。
筆者は一瞬、面食らってしまった。なぜなら、Ive氏の勤めるAppleは製品、マーケティングから小売店、腕時計バンドまで、あらゆることに対して「Think Different」のアプローチで臨むことを長年誇りにしてきた企業だからだ。同氏は1996年からAppleのデザインチームを率いており、現在では最高デザイン責任者を務めている。
カラフルな「iMac」「iBook」から「iPod」「iPad」「iPhone」「Apple Watch」まで、Appleのすべての主要製品のデザインに関わってきたIve氏は、「何か違うことをやるのは実際には比較的簡単で、比較的早くできる。そして、そう聞くと飛びつきたくなる」と述べた。
Ive氏は、Appleの最も強力なノートブックシリーズで、先頃刷新された「MacBook Pro」のデザインについて説明するインタビューで、「われわれは物事の進め方に関して、それを良い方向に進めていくためならば、自らに限界を設けることはしない。ほかと違うだけで、全く優れていないことは絶対にやらない」と語った。
そうした考え方を知ると、競合他社が「Windows」タブレットやPCにマルチタッチディスプレイを搭載しているにもかかわらず、Appleが「何年も前」に「Mac」にはタッチスクリーンを追加しないことに決めた理由がよく分かる。その代わりに、より大型のタッチパッドや、Ive氏が明かそうとしないほかのアプローチを試してきた2年間を経て、同氏とそのチームは、キーボード上部のファンクションキーに取って代わる細長いマルチタッチバーを考え出した。そのマルチタッチバーのOLEDディスプレイは、ボタンやコントロールスライダー、ダイヤル、ツール、絵文字など、ユーザーが使っているアプリケーションによって表示が変化するメニューの役割を果たす。
Appleはこのマルチタッチバーを「Touch Bar」という単純明快な名前で呼んでいる。Touch Barは米国時間10月27日に披露され、11月に発売される新しい13インチおよび15インチのMacBook Proに搭載されている。
5000件以上の特許を保有するIve氏は、米CNET NewsのConnie Guglielmo編集長とのインタビューに応じ、Touch BarがAppleにとって「非常に興味深い方向性の始まり」にすぎない理由を語った。
--Touch Barは珍しいコンピュータ操作方法です。なぜタッチバーなのですか。
Ive氏:われわれは、概念的に理にかなうデザインをいくつか検討しました。しかし、しばらくの間、それらのデザインをいわば実践的に日々使用してみると、魅力が薄れることもありました。どのプロトタイプを作る前にも、われわれはかなり長い期間試しました。従来型のキーボードに戻ったときに、その価値を強く実感したのです。
--あなたは何を成し遂げようとしていたのですか。
Ive氏:デザインチームから見て、われわれの出発点は、タッチと従来型のキーボードという両方の入力方法の価値を認識することでした。しかし、従来のキーボードには、奥深くに隠されたような入力も非常にたくさんあります。われわれがそうした複雑な入力を使いこなすことができるのは、主に習慣と慣れのためです。
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