--デザインの観点から、MacBook Proに取り入れるものと、他のモバイルデバイスに取り入れるものをどうやって決めていますか。
Ive氏:入力と出力は、製品を大きく決定づける要素です。これが理論上、極めて重要で強力な製品属性であり、製品特性であることは、誰もがわかっています。そのことに可能な限り納得したとしても、それが最終的な製品を損ねるものなら、どこかの段階で妥当でも有益でもなくなるということを理解しなければなりません。
独創的なアイデアについて考えることと、独創的なアイデアを探って試すこと、さらにはそれを具体的な製品に活かす方法を見つけ出すことは、おもしろいくらい違います。種類の違う取り組みなのですが、当社は最終的な製品に大いに力を注いでいます。
--Mac、iPad、iPhoneのデザインについて、どんな哲学に立っていますか。それぞれ、どのようにアプローチしているのでしょうか。
Ive氏:形状というのは、素材と分けられないし、素材を形づくるプロセスとも分けられないと私は強く感じています。徹頭徹尾、一緒に開発しなければなりません。つまり、(製品の)作り方と切り離した形ではデザインできないということです。そういう重要な関係にあります。
当社は、素材の検討だけでも膨大な時間をかけています。あらゆる範囲のさまざまな素材、幅広い種類のプロセスを模索します。その探究から導き出される結論がどれほど洗練されたものか、知ったら驚くはずです。
--たとえば、どんなものでしょう。何か例は挙げられますか。
Ive氏:例は出せませんね。
でも、それがわれわれのチームとしてのやり方です。この20年、25年ずっと。それこそが最も端的な例と言えます。基本的にビレットを加工して、長年開発しているケースのいろいろなパーツを作り出すというプロセスで、固体アルミニウムも使いますし、当社で開発したアルミニウム合金も使います。
アーキテクチャと、そうした素材の使い方という点での劇的な変化の度合い。われわれはこれに長年かけて取り組んでいます。常に磨きをかけてソリューションを進化させようとしています。ですが、現在の(Macの)アーキテクチャより良いものができていないというのは、興味深いことです。
チームとして、Appleの中核的な哲学として、まったく違うこともやろうと思えばできるのですが、それは今より良いものではありません。
--Macユーザーはデバイスと感情的な結びつきがあり、一定の期待を抱いています。どこまでやるかを判断するとき、その点は考慮しますか。
Ive氏:どこまでやるか、自分たちに制限を設けることはしません。より良いものを目指している限りは。ただ違うだけで良くはならない、というものに取り組むことはありません。
前にも言いましたし、Appleも言ってきたことですが、何か違うことをやるというのは、実際にはわりと簡単で、比較的すぐにでき、そちらに流れがちです。
--あなたとあなたのチームは、何かを変える価値があるのかどうか、どうやって判断していますか。
Ive氏:長く存続しているチームには、見落とされがちな価値があります。コミュニティーで学ぶ、グループとして学ぶということです。1つのプロジェクトから次のプロジェクトに移るとき、共通の理解と共通の経験に基づいて感じられる勢い(というものがあります)。1つのプロジェクトのどんな苦労からでも、どんな課題からでも、実際に得られるものがあり、それを次のプロジェクトに活かせます。
今回のMacBook Proにしても、過去の製品を経てこなければ、市場に投入することは決してできません。どの製品も間違いなく、前の製品についての経験が必要なのです。
--違うことなら、簡単にすぐできるとおっしゃいました。タッチスクリーンベースのMacBook Proが登場しないのは、そのためですか。タッチスクリーンを選ぶのは簡単だったはずです。それとも、他のPCメーカーがもうやったことだから、違う方向で行きたかったということでしょうか。
Ive氏:マルチタッチを検討したのは、もうずいぶん前のことですが、当時は適切な用途と機会を理解しようとしていました。(Macが)それに適した環境だとは、どうしても思えませんでした。とりたてて便利というわけではなく、マルチタッチの用途としてふさわしくなかったのです。
--なぜでしょうか。
Ive氏:山ほどある実用上の理由からです。これは話しにくいですね(笑)。どうしても詳しい話が増えますし、そうなると、今取り組んでいることにも触れなければなりませんから。これ以上のことはあまりお話ししたくありません。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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