アップル「Siri」の”おバカさ”を突くグーグルのハードウェア製品投入 - (page 3)

 画像や映像など情報の出力先としてスマートフォンは今後も残り続けるだろうが、その情報を引き出すための入力側で音声の比重が高まれば、画面をスクロールしたりアプリをクリックしたりといったタッチ式のUIの重要性は相対的に低下する。同時に音声認識機能の先につながるAIの賢さが、ユーザー経験全体を大きく左右するようになる。

 Google Assistantの現状の出来ばえやSiriとの相対的な力の差などは別にして、Googleが「音声UI+AI」をテコに「ユーザーにとって最も身近な存在」の座を確保できるかどうかというのは今後の大きな焦点のひとつと言える。

巻き返しをはかるApple

 最後に、Appleが音声UI+AIの分野で手をこまねいているわけではないという点について簡単に触れておく。

 まず、9月に発表されたワイヤレスイヤホン「AirPod」について、Siriにつながる終端部分(end-point)と捉える見方を、Benedict Evans氏というAndreessen Horowitz(シリコンバレーのベンチャーキャピタル)のアナリストが記していた。

 次に、AppleがImagination Technologiesという投資先の英国企業から複数の人材を引き抜いているというニュースが10月半ばに流れていた。Business InsiderによるとImaginationはグラフィックプロセッサ(GPU)の設計を得意とする会社で、iPhoneに使われている「PowerVR」というチップも同社の設計したものだそうだ。GPUというと「ディープラーニングの計算処理に適したチップ」というのがまず頭に浮かぶが、Appleがどんな具体的用途を想定してGPUを自前で設計しようとしているかなどはよく分からない。

 さらに、米国時間10月17日には、Appleがカーネギーメロン大学の著名なAI研究者を獲得し、同社のAI研究責任者(director of AI research)に起用したというニュースがBloombergで報じられていた。この記事の冒頭には「Google、Microsoft、Amazonといった競合他社に対してマシンラーニング分野で失地挽回を狙うAppleが、著名なAI研究者をカーネギーメロン大学から雇った」との一節がある。

 また同社が、ディープラーニング、コンピュータビジョン、マシンラーニング、リインフォースメントラーニング(強化学習)など分野の経験を有する科学者を募集していること、同社がこの1年間に少なくも6社のAI関連ベンチャーを買収してきていることなども記されている。

 Appleのこうした人材獲得の動きがどれほどうまくいくのか、獲得した人材が成果をあげるまでにどれくらいの時間がかかるのか、あるいはそれが具体的にどんな形をとって現れるのかなどはよく分からない。同様に、Googleの投入したハードウェア製品がどこまで市場(消費者)に受け入れられるかも現時点ではまだ分からない。ただ、各社が「音声UI+AI」という新しいルールのゲームで戦いを本格化させつつあることだけは間違いなさそうだ。

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