Steve Jobs氏とも個人的な付き合いのあったMossberg氏はふだんめったにApple製品の悪口を書かないが、時々Appleのソフトウェアやオンラインサービスを槍玉にあげて、そのお粗末さに対する苦言を呈することがある。後から思うと、Mossberg氏はこの時「Google Assistant」を搭載する「Google Pixel」のテストをしていて(翌週にそのレビュー記事を公開していた)、Siri開発の停滞ぶりが心配になり、このコラムを書いたのかとも思えてくる。
なお、Mossberg氏のコラムに言及したDaring FireballのJohn Gruber氏も「Siriは確かに対話が苦手」と認めている。この場合の「対話」というのは、前の質問の答えを引き継いで次のリクエストに応えることができないといった意味――たとえば「次の大統領候補戦の討論会はいつ?」との問いにSiriは答えることができるが、次に「その日時をカレンダー(の予定)に追加して」と指示してもそれができないといったことだ。
さらに、「そんながっかりさせられる経験を何度かすると、ユーザーはSiriを使わなくなってしまう。それがAppleの直面する大問題」「Siriの性能が大幅に向上したとしても、いったん使わなくなったユーザーはそのことに気づかずに終わる可能性もある」というGruber氏の指摘も注目に値する。
Mossberg氏は前週のコラムで、Googleのハードウェア製品発表会の話題を採り上げ、Googleが自社のAI関連技術と音声認識技術をつかえば、どこよりも優れたサービスを提供できると考えていること、そのサービスを提供する経路を確保するためにGoogle Pixel(自社ブランドのスマートホン)や「Home」(音声認識機能付き"スマートスピーカー")、さらにはHomeをネットにつなぐWi-Fiアクセスポイントまで準備したとの見方を披露していた。
かなり大雑把な捉え方とも感じるが、「なぜハードウェア製品発表の場でSundar Pichai氏(Googleの最高経営責任者:CEO)がわざわざAIの重要性を強調していたか」という点を説明する答えとしてはわかりやすい。
「われわれはモバイルファーストの世界からAIファーストの世界へと移行していく。その点は自分の目には明らか(“It’s clear to me,” he said, “that we are moving from a mobile-first to an AI-first world.”)」などとPichai氏が発表の席で述べていたともMossberg氏は記している。
モバイルファーストの世界でいちばん儲けたのがAppleというのは改めていうまでもないが、GoogleとしてはAIファーストの世界で有利な立場を確保することで新たな勝機をものにできると考えているのだろう。それと同時に、Amazonの「Alexa」のような特定の仕事をうまく処理できるAIもいろいろ出そろい始めてきているので、仮にこの分野で後手に回ると同社の収入の柱である検索事業まで脅かされかねない……Googleではそんな懸念も抱いているのかもしれない。
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