パナソニックのハイエンドオーディオブランド「テクニクス」と、レコード盤製造を手掛ける東洋化成、レコード針の開発、製造をするナガオカの3社は、コラボレーション企画「レコード再発見プロジェクト」の一環として、東洋化成のアナログレコードの製造を手掛ける末広工場の見学会を開催した。
レコード再発見プロジェクトは、日本に本社と製造ラインを置き、“Made in Japan”を実践する3社が共同で実施しているもの。4月に発足し、ウェブサイト「Record Rediscover Project」を開設。レコードの楽しみ方などを提案していくほか、音楽鑑賞推進イベントを実施している。
テクニクスは、アナログレコードプレーヤーの新製品「SL-1200G」の発売を9月に控えており、現在予約を受付中。6月に発売した限定モデル「SL-1200GAE」は、世界で1200台、日本分は300台のみの販売であったが、予約受付開始から約30分で売り切れとなった。
テクニクスは宇都宮、ナガオカは山形、東洋化成は横浜と、3社ともにアナログレコード関連事業でMade in Japanを実践していることが共通点。また「カートリッジの製造は手作業のため、熟練性が必要になる。一番デリケートな組み立て工程では100分の1ミリ単位の調整が必要になり、それを実現しなければ品質は保てない」(ナガオカ技術アドバイザーである寺村博氏)と“熟練の技”を社内に持つことも重要な要素だ。
パナソニックも「最新設備を投入した宇都宮工場で全体のアッセンブリを行い、熟練作業が必要になる組み立ては、パナソニックのOBも参加しながら東大阪で行っている。SL-1200Gは、最新設備と手作業をマッチングさせて製造している」(パナソニック技術本部ホームエンターテイメント開発センター係長である志波正之氏)と現状を話す。
今回、見学会を開催した東洋化成も、レコードのカッティング技術が身につくには3年はかかると言われており、熟練した技術で支えられている。東洋化成レコード事業部部長の石丸仁氏は「カッティングはもちろん、メッキやプレスの工程も職人技がないとうまくはできない」と現状を説明した。
東洋化成末広工場は、現在、日本で唯一のアナログレコード製造工場。音楽ソースがCDへと切り替わり市況は低迷したが、5年ほど前から右肩上がりに需要が拡大しており、ここ1~2年はプレス数量も伸長している。その背景には、レコードプレーヤーの新製品登場やローソンHMV、ディスクユニオンといったレコード専門店の復活、人気アーティストのアナログレコード盤発売などが寄与しているという。
CDの登場とともに市場は低迷しながらも、アナログレコード製造を続けてきたのは、東洋化成の創設者が「レコードメーカーにもお世話になったので、つぶすことなく続けようという意思があったから」(石丸氏)とのこと。以前は材料も作っていたが、現在では1社のみとなった材料工場から取り寄せており、それ以外はすべて一貫して手掛けている。
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