インド発のメッセージアプリ「Hike」に熱視線--中国大手が巨額出資する皮肉なワケ - (page 3)

Rajiv Rao (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル 編集部2016年09月02日 07時00分

 Hikeは機能やサービスの面で現在のWeChatに遠く及ばないが、(中国ではないにせよ)アジアを代表するメッセージングアプリに向かって着実に進化していることは間違いない。インドにはまだネットに接続していない人が約8億人いることを考えると、中国企業がインドでWhatsAppやFacebook Messengerに対抗すべくHikeに賭けることは、十分理にかなっている。

 これはTencentの対インド投資として過去最大だ。同社はこれまで、医療ポータルのPractoに対する9000万ドルの投資ラウンドを率いてもいる。一方、Tencentの最大の競合であるAlibabaは、Eコマース大手のSnapdealのほか、決済ソリューションの新興企業Paytmにも既に大規模な投資をしている。同社はEコマースへの関与を徐々に進めて、インドの2大Eコマース企業AmazonとFlipkartに対抗するサービスを近々立ち上げようとしているとのうわさもある。

 確かに、WeChatが強大な存在となっているのは、決済をエコシステムにシームレスに統合できるモバイル決済ソリューション(一部ではWeChatの「トロイの木馬」とも呼ばれている)を有しているからだ。3年前には、WeChatを使って買い物をする人はごくわずかだった。The Economistによると、今ではその巨大なユーザーベースの半分以上がカードをWeChatアプリに登録しており、3分の1は日常的にオンラインで買い物をしているという。したがって、WeChatとその1000万の仮想店舗、7億人のユーザーは、世界最大級の仮想ショッピングモールであり、実際に利益を生み出している。

 Tencentは先ごろ、同社モバイル決済サービス「WeChatPay」の取引額がわずか1カ月で500億ドルを記録し、その0.1%に相当する約4600万ドルを手数料として得たことを発表した。WeChatPayの2016年の年間取引額は5500億ドルに達する見込みで、これは米国に本社を置くPayPalの年間取引額の2倍近い金額だ。WeChatPayは瞬く間に、中国最大の決済ソリューションプロバイダーであるAnt Financial(Alibaba傘下で「Alipay」を提供。評価額は600億ドル)の最大の競合となった。

 いくつかの点で、インドは中国企業の投資対象として理想的な場所だ。Hikeのように、爆発的に拡大するインドのスマートフォンユーザーベースを相手にする企業への投資には、特に旨みがある。中国のインターネット上での取引は、半分がモバイルを使って行われているとみられるが、米国のEコマース全体にモバイルが占める割合は3分の1だ。

 インドは全般的にPC革命の影響を受けなかった。ネットにアクセスする人は、ほとんどがコンピュータではなくスマートフォンを使用する。つまり、インドでは、Eコマース全体にモバイルが占める割合が中国より大きくなる可能性もあるということだ。Hikeのような企業にとっては追い風だろう。

 このことは朗報だが、問題もある。莫大な額のステッカーや着信音、壁紙がインド人によって消費されている(その数字は今後さらに拡大するだろう)とはいえ、その代金をネット経由で支払うのは途方もなく大きな問題だ。クレジットカード詐欺が横行していることを考えると、さらに頭の痛い問題になる。「だが、問題はこの国の決済インフラストラクチャが極めて貧弱なことだ。そのせいで、お金を稼ぎたくても稼げない。それが最大の理由だ。決済インフラストラクチャが大幅に改善されない限り、収益をあげることができない」。Mittal氏はこのように述べた

 さらに、世界最大かつ最もおいしい市場である中国から締め出されたFacebook(MessengerとWhatsAppを保有)はおそらく、Amazonと同様にインドに全力で攻め込んでくるだろう。WhatsAppがいつWeChatと同じような機能を提供して競争を激化させるかも分からない。WhatsAppは大きく先行しており、中古車からヤギまであらゆるものを(店頭ではなく)スマートフォン上のメッセージグループで販売するための標準的な方法になっている。したがって、日常的に利用するユーザーを獲得するための戦いは手段を選ばないものになるだろう。

 しかし今のところはTencentのWeChatが、世界で勝利するためのベンチマークだ。Hikeが安定期に入ったことで、インドで潮の流れが突如として変わりつつある。インドでは、中国に続いて最も多くの人々がインターネットの世界に流れ込んでくるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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