インド発のメッセージアプリ「Hike」に熱視線--中国大手が巨額出資する皮肉なワケ - (page 2)

Rajiv Rao (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル 編集部2016年09月02日 07時00分

 Andreessen HorowitzのConnie Chan氏はその原因について、FacebookとWhatsAppが自社ネットワークの1日および月間のアクティブユーザー数を注視しているのに対し、WeChatは1時間単位でユーザーのニーズに気を配っているからだと説明する。WeChatは、ソーシャルネットワークの規模を可能な限り拡大することに力を注ぐのではなく、自社の顧客ベースのためにモバイルライフスタイルを作り上げることに取り組んでいる。

 驚くべきビジネスモデルだ。The Economistがこれをうまく説明している。WeChatユーザーは同アプリを使って、タクシーを呼ぶ、その運賃を支払う、実店舗やオンラインショップで商品代金を決済する、診察を予約する、映画のチケットを購入する、さらには電気料金を支払う、といったことを習慣的に行う。WeChatの「シェイク」機能では、近くにいるユーザーを見つけられる(すぐに中国版のTinderになった)ほか、テレビに向かって端末を振って放送中の番組に関する詳細情報を入手することも、その番組を見ている他のユーザーと交流することも可能だ。また、中国では旧正月にお年玉を赤い封筒に入れて渡すのが習慣になっているが、電子マネーを友人や家族に送ることもできる(The Economistの報道によると、2016年の旧正月には4億人以上のユーザーが320億回、電子マネーを送信したという)。これ以外にもWeChatの活用方法は無数にあるだろう。

 つまり、WeChatは単なるアプリではない。1000万以上の小売業者、ブランド、銀行、自動車メーカー、ポップシンガー、ニュースブログのほか、同アプリ内で何かを販売、議論、発信したいあらゆる人やものと連携する「スーパーアプリ」だ。アプリというより、インターネット上のウェブページに近い。WeChatはアプリ内アプリであり、OSであり、プラットフォームであり、エコシステムでもある。呼び方は何でもいい。中国で暮らす人にとっては、生活そのものであるとも言える。目が覚めてから眠りにつくまでを共にするものだ。

 Hikeが最初からWeChatを参考にしていたのは間違いない。アジア発の他のメッセージングアプリ「カカオトーク」(韓国)や「LINE」(日本)の影響も受けているだろう。これらもローカライゼーションの取り組みにおいて同様に機能している。Hikeにはインドのユーザー向けのプライバシーオプションがある。「隠しモード」でチャットして、詮索好きな親族の目から逃れられるという機能だ。また、データ料金が高く、インターネットに接続できない場所も多い国において、Hikeアプリを使っていない友人にSMSメッセージを送信することができる。Hikeは補助的なゲーム部門も設けており、「Subway Surfer」「Temple Run」などのインド版とも言えるゲームや、インド市場向けの他のオリジナル作品をインド市場に提供している。1カ月あたりのプレイセッションは1億回を上回るようだ。Hikeにはニュース機能も統合されている。

 HikeのMittal氏の話からは、WeChatのやり方を踏襲することに迷いはなかったという印象を受ける。創設者であり最高経営責任者(CEO)を務めるKavin Mittal氏はBusiness Todayに対し、次のように語った。「インドには、アプリに関して大きな問題がある。アプリのアンインストール率が全世界の2倍にのぼることだ。そこで、Hikeが標準のプラットフォームになる可能性がある。(Eコマース企業は)このプラットフォーム上に展開できるようになるのだ」。Mittal氏によると、ブランドチャネルが第2の柱の役割を果たし、既にローカライズ済みで同アプリ上で大人気のステッカーやゲームの販売が第3の柱になる可能性があるという。

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