これはもはやハイエンドスマートフォンであっても、スペックの数値だけでは製品の優位性を説明することに意味を見いだせなくなっているからだろう。消費者が求めているのは「6GバイトのRAMを搭載したスマートフォン」ではなく「快適に操作でき、持ちやすく、しかもデザインのいい製品」なのだ。
Galaxy Note7の価格は日本円で10万円弱になるだろうが、その価格になれば性能が高いことは消費者は誰もがわかっている。Galaxy Note7の発表会では「実際に何ができて、どんなに便利なのか」、その点が大きくアピールされており、数値による優位性の説明はほとんど行われなかった。この「消費者にとって使いやすい製品を開発した」という自信があるからこそ、スペックの詳細説明を省くという、大胆なプレゼンになったのだろう。
なお発売日は8月19日と発表されたものの、価格は公表されなかった。アップルですら新型iPhoneの発表時には、199ドルといった、2年契約の割安な価格を表示するのに対し、SamsungはSIMフリーのいわゆる定価すら発表しなかったのである。しかし価格は国や通信事業者との契約の有無により変わるものであり、詳細は各国別のプレスリリースに任せるほうが消費者にとってもわかりやすい。
そしてもう1点の「恒例破り」が、他社品との性能の比較だ。今や各メーカーの新製品発表会では、iPhoneとの性能比較を行うことが一般的になっている。中国メーカーの発表会ではSamsungや同郷の中国メーカー他社製品との比較もよく行われる。2月にSamsungが行ったGalaxy S7/S7 edgeの発表会でも、カメラ性能のアピールにはiPhone 6s Plusとの比較が行われた。
ところがGalaxy Note7の発表会では、他社の製品がプレゼンの最中に登場することは一度もなかった。カメラの性能もGalaxy Noe7で撮影された美しい写真を表示するだけであり、それを他の製品と比較することすら行われなかったのだ。
Samsungは、2015年12月にIM(ITモバイル)事業部のモバイル部門トップをDJ Koh氏に交代した。同氏は2015年に発売された、「Galaxy S6」や「Galaxy Note5」の開発を統括。デザインと質感を一新し、従来のSamsung製品のイメージを一変させた“モノづくりの現場”に直接携わってきた人物だ。
スマートフォンのスペックはもはや必要十分な領域に達している。2015年9月に発売されたiPhone 6sと6s Plusの販売が低調なのも、人々はもはや新型iPhoneに買い替える必要性を感じていないのだろう。
「これからのスマートフォンは、単純な性能アップを追い求めるのではなく、それを通してユーザーが求める新たな体験を提供する」。Galaxy Note7の発表会では一貫してそれが説明された。Galaxy Note7の高い完成度は、DJ Koh氏の下で新体制となったSamsungのスマートフォン事業の完全復調を示していると見ることができるだろう。
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