「スピーカに使えるスペースはこの部分の3mmだと(スマートフォンメーカーに)言われる。そのため、音質が制限されてしまう」と語るのは、Harman AudioのバイスプレジデントであるKevin Hague氏だ。Harman AudioはGoogleに協力し、専用スピーカモジュールがAraスマートフォンの数あるセールスポイントの1つになることを証明しようとしている。
そして、Araの場合、スピーカが1基に限定されることはない。6つあるモジュールスロットに複数のスピーカと複数のバッテリを装着すれば、ステレオシステムとして使うことができる。Camargo氏によると、Araの消費者向けバージョンからは、標準の内蔵バッテリだけでも丸一日は持つ見込みで、バッテリモジュールを1つ追加すれば持続時間が約45%延びるという。
しかし、カメラ、バッテリ、スピーカは比較的簡単に実現できる機能にすぎない。このプラットフォームをきっかけに、サードパーティーのハードウェアメーカーが大挙して参入し、今までスマートフォンに搭載されたことのないあらゆる種類の製品を開発するようになると、Project Araチームは考えている。自動車用のワイヤレスキーフォブ(Camargo氏によると動作するプロトタイプがあるという)から、使い捨ての催涙スプレーまでさまざまだ。アルコール検出器の専門メーカー、BACtrackも参入している。
「常軌を逸したものが作られることは予想しているし、それで問題ない。むしろ、そうなることを期待している」。ATAPのクリエイティブおよびマーケティング担当責任者を務めるBlaise Bertrand氏はこのように語っている。
とりわけ興味深い市場は医療だろう。生活を改善できそうな技術に需要はあるものの、特定のニーズを持っている人の割合は小さい市場だからだ。
「その一例が血糖測定器だ。幸い、私には必要ないので、血糖測定器モジュールに興味はない。だが、糖尿病の人にとっては生活に欠かせないものだろう。この機能が内蔵されたスマートフォンは、どのメーカーも作らないはずだ」(Camargo氏)
万人に必要とされるわけではないが素晴らしい技術というものについて考えるなら、GoogleのATAPで進んでいる他のプロジェクトもそれに該当する。深度センサカメラの「Project Tango」や、ジェスチャセンサレーダーの「Project Soli」などだ。Camargo氏は肯定も否定もしないが、Project Araが貢献する可能性を示唆し、次のように述べている。
「こうした技術はまさにモバイル向けだが、リスクが高いためスマートフォンの次期フラッグシップモデルに搭載するのは難しい。8000万台のスマートフォンを販売するとなれば、間違いを犯すわけにはいかない。(中略)モジュールが注目されることになるだろう」(Camargo氏)
言い換えれば、カメラメーカーの場合、世界最高のスマートフォン用カメラを作るにしても、ユーザーが実際に買える価格帯のスマートフォンにどうやって組み込むか考えなければならないが、そうではなく、世界最高のスマートフォン用カメラを作ることだけに集中して、それをプレミアムの追加機能として販売できる可能性があるということだ。
まだ明らかになっていない詳細は多いが(モジュールの価格など)、GoogleはAraの強化に本腰を入れているようだ。4月の時点で、Araチームは研究開発部門であるATAPを離れて、Rick Osterloh氏の直属となった。同氏はGoogleの新しいハードウェア部門の責任者であり、先ごろMotorolaから移ってきた人物だ。
「ビジネス化に必要なリソースと資金をすべて確保できる」。Araプロジェクトのリーダーの1人であるRichard Wooldridge氏はこのように述べた。
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