だが、Camargo氏はその後、スマートフォンを上着のポケットに入れてしまった。おそらく、筆者のように手の早いジャーナリストが、あまり多くを知りすぎないようにと警戒したのだろう。これ以上は何も見せてくれないのではないかと不安になった。今回のステージでデモが成功したのは例外で、普段は失敗しているのかもしれないが、確かめる機会はないだろうと思った。同氏が上着を脱いで卓球のラケットを手にしたとき、心のどこかで、あのスマートフォンを盗み見できたらどうなるだろう、と考えてしまった。
それでも、ようやく会議室で席に着き、Project Araの今後について話が始まると、何も心配することはなかったとわかった。Camargo氏が、魔法の呪文でカメラを取り出す操作をまた見せてくれたからだ。
モジュール式スマートフォンは、夢ではなく現実になった。
現在のProject Araは、かつて筆者の関心を引いたときとまったく同じままではない。大いに興味をそそることは変わらないが、アイデアのスケールがかなり縮小されているからだ。
当初のProject Araは、コンピュータマニアがデスクトップPCを自作するように、ユーザーがすべてのパーツを選んで自分だけのスマートフォンを作れるようにするものだった。Araは、最も求められる究極のスマートフォンになっていたかもしれない。プロセッサやセルラー無線パーツを、新しいモデルが出たときに取り換えれば、それだけでスピードアップが可能になる。Googleが提供するのは「エンドスケルトン」(PCのマザーボードに相当)で、他の部分はハードウェアパートナーのエコシステムが供給するという具合だ。
だが、今のProject Araは、プロセッサなどの中核部品を交換できる設計になっていない。こうしたパーツはすべて組み込みになっている。
「ユーザー調査を実施したところ、コア機能のモジュール化に興味があるユーザーはほとんどいないことがわかった。コア機能がすべて本体に備わっていて、いつでも同じように動いてほしいというのが、ユーザーの希望だ」。Camargo氏はこのように説明した。
「最初のプロトタイプでは何もかもモジュール化したが、ユーザーには不評だとわかっただけだった」(Camargo氏)
そこで、新しいProject Araでは、長く使い続けられるスマートフォンを自作するのではなく、他のどこにもない組み合わせ機能を備えたスマートフォンを提供することになった。
2016年秋に出荷が予定されている「Project Ara Developer Edition」には、手始めとして4つのモジュールが付属する。スピーカ、カメラ、E-Inkディスプレイ(Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」で採用されているようなディスプレイ)、そして拡張メモリモジュールだ。
これだけでは、さほど魅力的とは言えないかもしれない。だが、これらはハイエンドのスマートフォンでさえ良好な性能とは限らない機能だ。サムスンの「Galaxy」に関して、音がこもりがちな1基だけのスピーカが気に入らないとしても、「iPhone」でもっと大容量のストレージが欲しいと思っても、普通はどうにもならない。
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