これはどれだけ大きな問題なのだろうか。Androidに対するGoogleの壮大な野心と同じくらい大きい。基本的に、同社がAndroidで目指しているのは、進化し続けるデジタルライフの土台となることだ。具体的には、VRの基盤、インターネットに接続するさまざまなモノ(自動車からスマートウォッチまで)を支えるソフトウェア、検索や「Google Maps」、YouTube、「Google Play」ストアといったGoogleの人気サービス(それぞれが既にユーザー数10億人を超える)への入り口という形がある。
しかし、アプリを設計しているAndroid開発者や、Google Playストアで公開されている100万種類のAndroidアプリの1つにどの新機能を追加するか決めようとしている開発者にとって、断片化したユーザーベースは計画に大きな影響を及ぼす要素だ。
Lockheimer氏によると、この問題の原因の1つは、端末メーカーとの「調整」不足だという。そのため、2年前にパートナーから、Androidを秋に発表するスケジュールでは新バージョンをホリデーシーズンまでにスマートフォンに搭載するのが難しい、との苦情を受けて、Androidの次世代版を春のGoogle I/O開発者会議で発表するようになった。
同じ理由から、2016年は、Android N(正式名称は公募で決まる予定)がGoogle I/Oよりさらに早い3月に先行公開された。
「端末メーカーが複数あるということは、それらのメーカー、つまり、複数のメーカーが自社の端末をアップデートする時期を決めなければならない。当社はメーカーや事業者と緊密に連携して、このプロセスをスピードアップする方法や、最新の改善点と革新的技術をもっと早くユーザーに届ける方法を検討している」(Lockheimer氏)
Googleの最高経営責任者(CEO)であり、Lockheimer氏の前にAndroidの責任者を2年間務めたSundar Pichai氏も、断片化には問題があると考えている。ただし、Pichai氏はその利点も指摘する。多数のバージョンが存在するために、パートナーはさまざまな水準の機能を備えた多種多様な端末を異なる価格帯で販売できるのだという。
「断片化は単純に悪と決めつけられるものではない。断片化は多様性を生むからだ。Androidの多様性はそれ自体が大きな強みになっている」。Pichai氏はこう語り、AndroidやVR、検索に組み込もうとしている人工知能に関するGoogleの「旅」について、自身の考えを示した。
とはいえ、Pichai氏も断片化の問題を解決したいと考えていることは認めた。「重要な機能がすべてのユーザーに行き渡るようにしたい」(Pichai氏)
Android Nは、最終的にどのお菓子にちなんで名付けられるとしても、Androidをコンシューマー向けVRプラットフォームに変えたバージョンとして、人々の記憶に残ることになるだろう。Android NはDaydreamの重要な要素の1つになったからだ。Daydreamは米国時間5月18日に発表された新しいハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームで、Androidを利用してスマートフォンをVR体験の駆動エンジンに変える。
Daydream(VRヘッドセットとリモコンも含む)に対するGoogleのアプローチは、Facebookの「Oculus Rift」やHTCの「HTC Vive」と異なる。両社が提供するのは、強力なコンピュータにつなぐ(文字通りコードでつなぐ)必要のあるハイエンドのVRビューアだ。Lockheimer氏とVR担当バイスプレジデントのClay Bavor氏によると、Googleの狙いは、VRを使いやすさとモバイル利用の両方に優れたものにすることだという。具体的には、スマートフォンを軽量のヘッドセットに差し込んで、ストラップで顔に固定し、シンプルなリモコンを使ってVRの世界を進むという体験だ。
GoogleがVR分野に投入した最初の製品「Cardboard」は、ユーザーが茶色の段ボールを自分で組み立てて完成させるヘッドセットに、スマートフォン(それなりに新しいものであれば、どんなスマートフォンでも使用可能)を組み込むというものだった。Cardboardのユーザーは約1000万人なので、現在最も広く使用されているVRシステムと言って差し支えないだろう。
だが、Daydreamはどんなスマートフォンでも使えるわけではない。スマートフォンメーカーは、VR体験を明確に想定したハイエンド(つまり高価な)スマートフォンを作らなければならないだろう。つまり、センサやチップ、ソフトウェアを追加し、それらすべてを円滑に連携させられるだけの性能を持たせる必要がある。それらのアップグレードは、Daydream体験で遅延の問題を防ぐために必要になる。現実世界とVRの間で少しでもずれが生じたら、乗り物酔いの症状が現れるおそれがあるからだ。
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