Google I/O 2016

グーグルのS・ピチャイCEOに聞く--「Google I/O」で披露のAIビジョンや新製品の狙い(前編)

Richard Nieva Connie Guglielmo (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年05月23日 07時30分

(編集部注:Googleの最高経営責任者(CEO)Sundar Pichai氏のインタビューを前編と後編に分けて公開します。後編は5月25日に公開されています)

 Sundar Pichai氏のオフィスは、カリフォルニア州マウンテンビューのGoogleplexにある。光で満たされたそのオフィスの壁の窓からは、そこから歩いて行ける距離にある、ショアラインアンフィシアターのテントの2つの先端部分が見える。

 その野外コンサート会場で、Pichai氏はGoogleの最高経営責任者(CEO)として初めて、2000人を超えるGoogle従業員と7000人以上の開発者が集まる「Google I/O」開発者会議を主催した。同社はこの7年間、サンフランシスコのコンベンションセンターでGoogle I/Oを開催してきたが、Google I/Oが10周年を迎える今回、Pichai氏は開催地をGoogleの裏庭とも言えるマウンテンビューに戻したいと考えた。同氏はGoogleの「Android」ソフトウェアと「Google Chrome」、検索エンジンのコミュニティーを称え、人工知能(AI)と仮想現実(VR)に対するGoogleのビジョンの次章を発表することを切望していた。

 しかし、Pichai氏は今、いらだちを覚えている。

 われわれはこの1週間、米国時間5月18日に開幕したGoogle I/Oで披露されたさまざまな製品を初めて目にしてきたが、その多くが既存製品を新たに解釈し直したものであることに気づかずにいられなかった。例えば、メッセージングアプリ(「Facebook Messenger」に匹敵する)や、音声作動式のスピーカー兼スマートホームのコントロールハブ(Amazonの「Echo」に少し似ている)、ビデオチャットアプリ(Appleの「FaceTime」を思い出す)、スマートフォンを中心に構築されたVR向けの新しいハードウェアおよびソフトウェアシステム(サムスンの「Gear VR」を想起させる)などだ。

カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleのCEO、Sundar Pichai氏のオフィスでAIやVRといった重要な頭字語について、同氏と話す米CNET NewsのConnie Guglielmo編集長とRichard Nieva記者。
カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleのCEO、Sundar Pichai氏のオフィスでAIやVRといった重要な頭字語について、同氏と話す米CNET NewsのConnie Guglielmo編集長とRichard Nieva記者。

 確かに、Googleの幹部陣はそれぞれの製品の背景として興味深く新しいアイデアやテクノロジについて説明してくれた。しかし、まだほかの誰も提供していない全く新しい製品はない。

 Pichai氏は温厚な性格で知られる(2014年にBusinessweekの表紙に取り上げられたときは、「Google’s Soft Power」、つまり、「Googleのソフトパワー」という見出しが付けられた)が、Googleがなんとなく同業他社を「模倣」しているという意見にはいらだちを見せた。同氏はすぐに怒りを鎮めた後、親会社Alphabetの最も重要な部門であるGoogleのCEOに自身が就任してからGoogleが歩み始めた「道のり」について、穏やかに説明した。

 「Googleは検索分野を手がけた最初の企業ではないということを理解するのが重要だ。LarryとSergeyが検索分野に進出したのは、何か違うことをやる機会を見出したからだ」とPichai氏は話す。同氏は43歳で背が高く、引き締まった身体をしている。白髪交じりのひげが少年のような笑顔に幾分かの厳粛さを与える。

 電子メールやオンラインマップ、ウェブブラウザに関しても同じことが当てはまる。既存分野に対する、これまでとは違った新たな見方が功を奏して、「Gmail」や「Google Maps」、Chromeはそれぞれ10億人のユーザーを誇るまでになった。Pichai氏は、「われわれが他社の先を行く分野もあれば、誰かが道を示して、われわれがそれを実行する分野も出てくるだろう」と述べ、スマートホームハブへの関心を喚起したAmazon Echoを評価した。「それが実情だ」(同氏)

 しかし、Googleは単に多くの新製品を生み出しているだけではない。今回の1時間にわたるインタビューでPichai氏が生き生きとした表情になったのは、それぞれの製品が互いの要素を借用し合って改良されていくことに話が及んだときだ。「Allo」チャットアプリから「Chirp」という開発コード名のスマートホームスピーカーまで、各新製品は人工知能と機械学習機能に対応しており、Pichai氏の新しい「Google Assistant」の遊び場としての役割を果たすことができる。

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