中国で6カ月前に開始されていたAppleの「iBooks」と「iTunes Movies」が、政府当局の要請によりサービスを停止した。The New York Times(NYT)が米国時間4月22日に報じた。
同紙の情報筋らによると、報道や文化を取り締まる政府当局が、両ストアのサービス停止を要請したという。
これは、米国のIT業界と中国との関係が悪化していることを示す兆候の1つだ。
Appleの各種コンテンツストアを含む「サービス」部門の売上高は、2016会計年度第1四半期決算の時点で売上高の約3%に相当する48億ドルで、同社事業に占める割合は小さいものの、成長を遂げていた。
しかし、両ストアが停止させられた理由はまだ明らかになっていない。
言論と表現の自由に対する攻撃、NYTの表現を借りるならば「西洋の思想に対する取り締まり」だとする見方もある。中国のこれまでの検閲や、言論の自由を妨害する行為を考えれば、それほど意外でもない。
しかし、それも1つの理由かもしれないが、Edward Snowden氏が大量の機密文書を報道機関に内部告発したことで米国家安全保障局(NSA)の監視活動が暴露されたことを受け、中国では西洋諸国から距離を置こうとする小さな動きがこれまでも多数見られており、今回の動きはその新しい幕の始まりにすぎないのかもしれない。
NSAによる監視が明らかになって以来、Cisco、Intel、McAfeeを含む多数の大手IT企業が、中国政府の認定技術ブランドから除外された。中国政府は、米国政府が他国に対する諜報活動のためにこれらの企業の製品を支援しているのではないかと懸念したのだ。
それ以外の企業にも影響が生じている。Google、Cisco、IBM、Qualcomm、HP、Microsoftなどの大手IT企業が総じて、四半期決算報告で「厳しい市場」条件と「事業遂行上の問題」を懸念材料として挙げた。
簡単に言えば、これらの企業は中国地元企業との競争に直面して利益を失っているのだ。
中国はやはり、米国外で事業を展開するほとんどの米大手IT企業にとって、非常に重要な地域だ。特にAppleは、売上高の約4分の1を中国が占めており、中国は同社にとって米国に次ぐ第2位の市場となっている。
Appleは2013年末に中国への参入を積極的に進めて以来、同国での事業が好調で、近年は中国政府ともまずまず良好な関係を維持してきた。捜査や長期にわたる調査を受ける企業もある中で、Appleだけは概してその状況を免れてきた。
同社売上高の大部分を占める「iPhone」と「iPad」の販売が脅かされることはないと思われる。Appleは製品のほとんどを中国で製造していることから、これらの製品を危険にさらせば、中国企業が痛手を負うことになるからだ。
Appleの事業のうち、これより小規模で排除可能な部分を狙うのは、中国政府の怪しい雲行きを示す兆候であり、さらなる動きがあることを予感させる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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