黒川氏は、ハイエンドなVRデバイスやコンテンツが出てくる状況があるなかで、ハコスコを手がけている藤井氏に対して、次の一手を考えているかという質問を投げかけた。まず藤井氏は、スマホ活用のVRはコンテンツを1回見て終わってしまう場合が多く、あるいは面白いコンテンツを何度も見る場合もあるが、体験者のアクションがほかに移らずお金がまわらないという。「こうなるとBtoCではスケールが出ない。やらなければいけないのはBtoBtoC、コマース連動型の体験にしないといけない」と主張。スポンサーが効果を確認できないため、最初の試しはやってくれても2度目、3度目がなく、ここをクリアしなければいけないのに、このことを考えている人はいないとも指摘する。
VRデバイスの価格帯についても語られた。Oculus Riftは599ドル、HTC Viveが799ドルであり、さらにPCや日本への送料も考えると決して安価とはいえない価格だ。このことについてサーティン氏は時間の経過、面白いゲームやコンテンツが購入され楽しめるようになると価格も下がってこなれてくるものと考えているという。
吉田氏は、「これらのVRデバイスから生み出される体験からしてみれば安いもの」と言っていた、Oculus創業者のパルマー氏の意見に同意をした。パルマー氏は、Oculus Riftは「安い」と言い続けながらいざ新製品を599ドルで発表すると「高い」と言われ、一方のHTC Viveが1000ドルぐらいとのうわさもあるなかで、799ドルだと発表さすると「安い」という意見になったことを受け、「マーケティングで勉強になった」と一言。場内の笑いを誘っていた。
日本のVRに関する取り組みについて、吉田氏は大手パブリッシャーというよりもgumiやコロプラ、グリーなどに代表されるようなモバイル系で展開したパブリッシャーが積極的で、新しいメディアが立ち上がるところに真っ先に乗り込む意気込みを感じるという。また、「サマーレッスン」を手がけたバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏のように、本当に好きな人が訴えかけるように取り組んでいるとして、そういった人たちを応援していきたいとした。
最後に黒川氏は、この先VR市場を盛り上げるには何が必要かを問いかけた。渡部氏はキラーコンテンツの出現を提案。昨今では人気タイトルがVRに対応したゲームエンジンで開発されていることからも、そのようなタイトルがスピンオフでVRに展開することで普及の後押しになるとの見解を示した。
藤井氏からは「あきらめないことと、やめないこと。続けないと何も成し遂げられない」と一言。まだ始まっていない業界や市場であるとの見解を示し、3年は続けていくことを考えているという。
サーティン氏は、藤井氏が言及したBtoBtoCのビジネスモデルがひとつの手法になると語る。VRを体験していない人にとっては機器も高価なものに感じるが、体験するとその価値を理解し、お金を払いたいと感じてくれるという。中国において、インターネットカフェでVRを体験してもらう試みがあることに触れ、これであれば体験することそのものに高価な機器をそろえる必要はない。まずは体験してもらうことが大事だとした。
吉田氏は、今のVRの盛り上がりを情熱を持って取り組んできた人なり企業が引っ張ってきた結果としつつ、この先に大事なこととして、VRに関わる人たちが「より良い体験を届けることにこだわる」と説いた。体験しないとわからないVRについて、初めて体験した人がいい体験だったと感じないことには、むしろ逆効果になり否定派にまわってしまう。
実際VR人気に乗っていこう企業も増えているが、良くないものが目立つようになってきていると指摘し、「だからこそ、いいものを出すという強い責任感と連帯感が必要」と主張。吉田氏もコンシューマ向けに「これだ!」と示せるようなものを出していくとした。また、制作側がVRに慣れてしまったり、コンテンツの内容がわかっているために、これが本当にいいものなのかがわからなくなることにVRの難しさがあると語り、デモや展示前には未体験の人に試してみて、初めて体験する人の意見を聞くことの重要性を説いた。
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