“実質0円”廃止や料金引き下げの影響は--携帯キャリア3社の決算を読み解く - (page 3)

ソフトバンク孫氏は“実質0円”自粛に疑問を呈す

 では、2月10日に2016年3月期第3四半期決算を発表したソフトバンクグループはどうだろうか。まず同社の決算内容を確認すると、連結業績で売上高は前年同期比8%増の6兆8102億円、営業利益は18%増の8753億円。2015年はアリババに関連する一時益があったことから純利益はマイナスとなっているが、その影響を除けば好調な業績となっている。

 国内の通信事業を見ると、営業利益は5983億円と伸びを示しており、通信ARPUは微減傾向だが、サービス関連のARPUが伸びていることが、業績の伸びに影響しているようだ。また、他社と比べて高い解約率を下げるべく、「ソフトバンク光」や、先日発表した「ソフトバンクでんき」など、家庭内のサービスを総合的に提供し、家族単位での契約獲得に力を入れていくとしている。


ソフトバンクは解約率の高さが課題になっていることから、「ソフトバンク光」「ソフトバンクでんき」とのセット割に力を入れるとしている

 また、ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏が、「世界一のネットワークを築いたことから、設備投資のピークは過ぎた」と話すなど、インフラへの投資が一段落したことから、フリーキャッシュフローが前年同期の36億円から2394億円へと大幅に伸びているとのこと。国内の通信事業が、投資から収益へと段階が変わったことを示している。

 さらに、業績不振が続いている米国のSprintに関して、孫氏は「業績が底を打って反転し始めた」と話している。売上高が前期比で上向き始めたことに加え、750項目に及ぶ「聖域なきコスト削減」(孫氏)によって、営業利益がようやく3億ドルのプラスに転じたとのこと。

 「1年前の決算で、Sprintは長く苦しい戦いになると話した。その3カ月後には、Sprintを売りたいと思ったことを話したが、買い手がいなかった。なのであれば、自分で改善するしかないと歯を食いしばって取り組んできた」(孫氏)とのことで、その成果が徐々に見えてきたことが自信へとつながりつつあるようだ。

Sprintもようやく営業利益が出るところまで業績を伸ばしている
Sprintもようやく営業利益が出るところまで業績を伸ばしている

 他にも、ヤフーなど多くの事業が好調を示すソフトバンクグループ。では総務省の要請に関する影響について、どのように捉えているのだろうか。中でも、2009年に「iPhone for Everybody」キャンペーンを展開し、iPhoneを実質0円で販売するという土壌を作ったのは現在のソフトバンクであることから、実質0円以下での販売自粛をどのように捉えているのかは、気になるところだ。

 まず足元の状況について、ソフトバンク代表取締役社長の宮内謙氏は「1月末まで激しいキャッシュバック競争が起きていたことから、2月はがくんと減ったように見える。だが昨年の2月と比べるとそれほど大きな減少ではないし、我々としてはシェアが上がっている」と話し、影響は想定よりも大きくはないとしている。

 もっとも、最近ソフトバンクは、純増を無理に追わなくなったことで純減傾向が急速に強まっており、今期も移動通信サービス全体では36.9万の純減、スマートフォンや携帯電話などの主要回線だけに絞っても純増数は1.36万と、100万件以上の純増を記録するドコモや、50万以上の純増数を記録するKDDIと比べると、その数はかなり少ない。元々獲得数が少なかったことから、実質0円販売の影響が大きく出なかったと見ることができそうだ。

孫氏は実質0円販売を総務省から問題視されたことを受け、要請に従う姿勢は示すものの、その方針には疑問を呈していた
孫氏は実質0円販売を総務省から問題視されたことを受け、要請に従う姿勢は示すものの、その方針には疑問を呈していた

 では、実質0円販売に関して総務省から指導されたことに関しては、どのように考えているのだろうか。孫氏はこの点について「ユーザーが購入当初に5万、10万といった端末代を払わなくて済むよう、よかれと思って提供したサービス。それがけしからんとおっしゃられる人がいることから、変えましょうとなった。それがユーザー目線で改善なのか、改悪なのか議論があるところではないかと思う」と答えている。実質0円での端末販売はユーザーメリットが大きいと孫氏は捉えていることから、総務省の対応には疑問を持っているようだ。

 しかしながら、要請自体には従う方針を示しており、「経営的には0円で提供する方が負担が大きいので、それが減ることは経営的に悪くない。その分エントリーユーザーには通信料をより安くしたり、若いヘビーユーザーにはギガバイト(通信容量)をプレゼントするような形で還元することが、方向性として起き始めているのはいいこと」とも話している。

 ただし、実際のところ通信容量が増え続けることを考慮すれば、新たに提示された1Gバイトというライトユーザー向けプランの実効性には疑問を抱く部分もある。また、通信容量のプレゼントも学割でのキャンペーン施策にとどまっている。これは3社に言えることだが、実質0円販売を自粛したことで得た利益を貯め込むだけでは、単にキャリアが儲かるだけとなってしまう。割引が減少した分の利益を、ユーザーにどれだけ、どのような形で還元していくのかが、今後大きく問われるところであろう。

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