1月末から2月にかけて、相次いで発表された携帯電話大手3社の第3四半期決算。各社とも好調な業績を維持してはいるものの、2015年に実施された総務省の料金引き下げ要請によって、今後の業績に不透明感が漂い始めている。各社の決算内容から、総務省要請の影響と今後を確認してみよう。
NTTドコモが1月29日に発表した2016年3月期第3四半期決算は、営業収益が前年同期比1.7%増の3兆3835億円、営業利益が16.8%増の6855億円。第1四半期に増収増益を達成して以降、継続的に業績を回復させているようだ。好調な業績をけん引しているのも、スマートライフ事業の成長によるところが大きく、同事業が通信事業の売上減を補うという構図も、ここ最近の傾向と大きく変わりはない。
ただし、通信事業自体が改善傾向にあるのも確かなようだ。契約純増数は前年同期比1.4倍となる301万契約にまで拡大したほか、番号ポータビリティでの転出数も、前年同期の23万から、3万へと大幅に減少。同社代表取締役社長の加藤薫氏によると「第3四半期はプラスであった」とのことで、直近ではまだ数は少ないながらも、転入超になっていることを明かしている。
さらに、2015年にスタートした光回線サービス「ドコモ光」も、累計申込数が「直近では140万に到達している」(加藤氏)など好調を維持。新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」導入後の影響も落ち着き、ARPUもパケットARPU、つまりデータ通信の利用が伸びて回復基調にある。2015年12月にスタートした「dポイント」も、dポイントカードの申込数が直近で180万に達するなど好調なようだ。
そんなドコモの業績に、今後影響を与える可能性があるのが、総務省の料金引き下げ要請である。総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受けて、12月18日に携帯大手3社に料金引き下げに関する要請がなされている。
その1つである「ライトユーザー向けの料金プランを提供するべき」という要請に応える形で、ドコモは「シェアパック5」を3月より提供することを、決算説明会の場で発表した。これは、家族で高速データ通信容量をシェアする「シェアパック」の新しいバリエーションで、容量を5Gバイトに抑える代わりに、料金を月額6500円に引き下げたものだ。
さらにドコモは今回、従来「シェアパック15」以上でないと同時契約できなかった、準定額制の「カケホーダイライト」の条件を引き下げ、すべてのシェアパックで契約できるようにした。これにより、シェアパック5とカケホーダイライトの組み合わせで、3人家族で通信容量をシェアして利用する場合、月額1万3500円、1人当たり月額4500円を実現している。
決算説明会ではさらに、もう1つの要請である端末販売の適正化に関する対応も明らかにされた。加藤氏は「2月から端末を実質0円で販売することは慎んでいきたい」と話し、先のタスクフォースで問題とされた、実質0円以下となる過剰な割引きを自粛する方針を打ち出している。実際、多くの店舗では、ドコモを含む大手3社のスマートフォンで、実質0円販売が姿を消しているようで、加藤氏の発言通り業界全体で自粛している様子を見てとることができる。
このほかにも加藤氏は、いわゆる“2年縛り”の問題に関しても、「3月ごろから、1カ月しかない解約期間を2カ月にするよう準備を進めている」と話しており、総務省の要請などに対して全面的に応じる姿勢を見せている。では実際のところ、これらが業績にどの程度影響を与えると考えているのだろうか。
端末販売の適正化は、割引額が抑えられることから増益要因となるだろうが、シェアパック5の提供は減収要因となる。加藤氏はシェアパック5に関して「カケホーダイライトが対応する影響が出てくると思うので、一定の減収の懸念はある」と話すものの、減収の影響は一時的なものにとどまると見込んでいるようだ。
個人で契約でき、しかも安価なことから、新料金プランへの移行時に契約者が殺到し、2014年の大幅な減収要因となった「データSパック」の反省から、今回は家族でシェアする時だけ料金を引き下げられるよう仕組みを限定している。これにより、料金を引き下げながらも、減収を抑えることに貢献する可能性が高い。
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