日本でも場所にとらわれない働き方が少しずつ浸透する中で、コワーキングスペースを利用する人が増えてきている。利用する目的は、やはり賃貸オフィスを契約するよりもコストを抑えられることだろうか。
ところがオランダには、コストを抑えられるどころか、なんと「無料」で利用できるスペースが点在している。そんなスペースをまとめて紹介するウェブサービスが、今回紹介する「Seats2meet.com」だ。
Seats2meetで紹介される多くのスペースを、なぜユーザーは無料で利用できるのか――その背景には、日本にはまだない、オランダならではの「新たなワークスタイル」があった。
Seats2meetで紹介される多くのコワーキングスペースを、ユーザーが無料で利用できるのは、自分の専門知識に興味を持っている人、逆に自分が興味のある専門知識を持った人と、お互いの知識・経験をシェアし、新しい出会い、アイデアを生むことが ”支払い(Social Currency)” とみなされるからだ。
ユーザーは自分の専門知識や経験(Social Capital)を登録して、初めてSeats2meetを利用することができる。これによって、アントレプレナーやフリーランスのみならず、企業に所属するビジネスパーソンもスペースで組織外の人などと出会うことで、プロジェクトに必要な新しいアイデアを得ることができる。
この仕組みが評価され、現在、オランダの他にスペイン、ドイツ、フランス、ブラジル、アメリカ、エジプト、イギリス、ウクライナ、スイス、チェコ、そして日本にもサービスを拡大。オランダ国内では提携先のコワーキングスペース、パブリックスペースは130カ所以上にのぼる。日本では東京都内に2カ所、提携先のコワーキングスペースがある。
筆者もオランダでSeats2meetを利用した。まず、Seats2meetのウェブサイトまたはアプリから、予約するスペースのタイプ(ミーティングスペース、ウォークスペースまたはデスクスペース)を選び、希望のロケーション、人数(ミーティングスペースの場合のみ)、希望日時を選択して検索。空席のあるコワーキングスペースが表示されるので、希望するロケーションを選択する。
この際、写真右下に「SC」のマークがあると、自分が登録した専門知識・経験が通貨とみなされ支払いが不要になる。各スペースには管理担当者がおり、予約画面の右上に担当者の連絡先と顔写真が表示されているので、不明点があれば予約前に確認できる。
初回利用時はユーザー登録が必要で、自分の専門知識や仕事内容、いま取り組んでいるプロジェクトなどを入力する必要がある。キャンセルは無料という点もフレキシブルで魅力的だ。(有料ミーティングスペースの予約キャンセルは利用日時の24時間前まで無料。)
予約の際に、自分が利用したいコワーキングスペースに今日どんな人が来ているかを確認でき、メッセージを送ったり、ミーティングをリクエストしたりすることも可能だ。
また驚くべきことに、Seats2meet直営のスペースでは、ランチや飲み物までも無料。これも同じく専門知識・経験で支払うことになる。場所によってランチが提供される時間が違ったり、10時以前からの利用者のみの提供など制限もある。
今回はオランダ南部、政治の中心地であるデン・ハーグにあるコワーキングスペース「Bazaar of Ideas」を訪れた。広々とした空間に、一般的な椅子席からソファ席、バーにあるようなハイテーブル、ハイチェアの席などがある。たとえるなら、オフィスというよりシェアハウスのリビングルーム(交流の場)のような感覚だ。
その日は夕方からアントレプレナーたちが集まり、自分たちがいま開発しているものや事業について発表し、交流するイベントも催されていた。この人たちも、もしかするとSeats2meetをきっかけに出会った人たちかもしれない。
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