デジタルネイティブが多数派となる時代に向けたCX戦略--日本IBM・工藤氏が講演

山田井ユウキ2015年11月26日 13時00分
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 「CNET Japan」を運営する朝日インタラクティブは11月10日、「ビジネスの未来を決めるカスタマーエクスペリエンスセミナー」と題したセミナーイベントを開催した。

 昨今、企業において顧客との接点はマスメディア、ウェブ、アプリ、ソーシャルメディア、店舗などオンラインとオフラインを問わず増加し、複雑化の一途をたどっている。その中で顧客を理解し、その体験をどのようにして向上していけばいいのだろうか。

 日本IBM インタラクティブ・エクスペリエンス事業部の事業部長である工藤晶氏による講演をレポートする。


日本IBM インタラクティブ・エクスペリエンス事業部 事業部長 工藤晶氏

2020年、生産人口の半数をデジタルネイティブが占める

 「2020年、日本の生産人口の何%がデジタルネイティブになると思いますか?」

 工藤氏は講演の冒頭、そんな質問を投げかけた。答えは「43%」だ。東京五輪・パラリンピックが開催される2020年、企業の中で意思決定に関わるデジタルネイティブは、人口の半数近くを占めることになるという。

 その傾向は世界を見渡せばより顕著だ。米国では51%、インドでは62%、アフリカではなんと71%もの割合をデジタルネイティブが占めると予想されている。

 デジタルネイティブが多数派を占める時代に向けて、我々はどんなカスタマーエクスペリエンスを考えていかなければならないのだろうか。

 すでに世界的な大企業は未来を見据え「顧客に新しい体験を提供している」と工藤氏。たとえば世界最大のタクシー会社「UBER」は車両を保有しておらず、世界でもっとも普及したメディアである「Facebook」はコンテンツを作り出していない。世界最大の時価総額を誇る小売業「アリババ」は在庫を持たず、世界最大の宿泊サービスを展開する「airbnb」は物件を持っていないのだ。

 データ量の増大という観点もある。工藤氏によれば、現在、世界のデータの総量は9ゼッタバイト(ゼッタは10の21乗)。しかし、2020年東京オリンピック時には、これが44ゼッタバイトにまで増加すると見られている。

 「このデータをいかに駆使してカスタマーエクスペリエンスをデザインしていくか。それが皆さんと我々にとっての課題になります」(工藤氏)。

急速なデジタルシフトには、マーケティング部門とIT部門の密接な協業が不可欠

 さらに予測を進めてみよう。工藤氏は今後、検索や情報交換などからなるデジタル空間と、物流活動や生産活動などのフィジカル空間の2つからなる「デジタル・フィジカル・ワールド」が出現すると予想する。

 その中には、さらに4つの主戦場が存在する。「ハードウェア(接続地点)」「データ資源(権益)」「ユーザー体験(価値)」「プラットフォーム(要衝)」である。

 戦いはユーザー体験、すなわち顧客にとっての価値をめぐって行われる。データ資源やハードウェア、プラットフォームなど各主戦場での成果が総合され、最終的にユーザー体験という形で勝負が決まるのである。

 では実際に、IBMはどのような形でカスタマーエクスペリエンスをデザインしているのだろうか。

 工藤氏が例として挙げるのは、IBMがテニスの世界4大大会で提供しているソーシャルデータや画像データを用いた新たなデジタル体験と、顧客行動のリアルタイム分析による顧客体験の向上施策だ。

 たとえば「クラウドトラッカー」では、ユーザーの行動を分析して会場内におけるセルフィーやInstagramへの投稿が多いスポットを抽出、試合以外のユーザーの楽しみもサポートする。また、Twitterのツイートがポジティブなものかネガティブなものかを分析し、選手の人気を割り出す「ソーシャルリーダーボード」なども提供している。

 カスタマーエクスペリエンスを向上させる基本的な考え方として、工藤氏は「セグメンテーションから個々の顧客へ」という言葉を挙げる。これは、グローバルな企業の経営者へインタビューをした結果、見えてきたものだ。最新の調査によると、「個々の顧客へのアプローチを強化したい」と考えている経営者は前回よりも22%増加して66%に。また、「対面ではなくデジタルテクノロジを活用して接点を強化したい」と考えている経営者は前回よりも19%増加し81%に達しているという。デジタル時代のカスタマーエクスペリエンスはデジタルで作りだしていこうと、経営者たちは考えているのだ。

 一方で、IBMでは2008年から2014年にかけて急速にデジタルシフトが進んだ結果、部署同士の連携に齟齬(そご)が生じるなどの問題も発生したという。


IBMではマーケティング部門とIT部門が密接に協業している

 これを解決したのは、マーケティング部門とIT部門による密接な協業である。「リーチ」や「レスポンス」「プログレス」といったデータをマーケティングダッシュボードで公開し、コミュニケーションツールとして活用。さらにマーケティング部門では、IT、デザイナー、マーケター、エージェンシーなど各部門から選出されたメンバーでクロスチームを組むことにより、スタートアップ企業のような感覚で仕事を進めているそうだ。

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