これまでと変更なく、変える必要もないデザインながら、中身はこれまでの21.5インチモデルと大きく異なる。同サイズでは初めてRetinaディスプレイが搭載され、4K以上の解像度が手に入るようになった。
加えて、P3と呼ばれるデジタルシネマの色空間をサポート。赤と緑で再現できる色域が拡がっているのが特徴で、筆者の目には、特に赤の色味がよりくっきりと表示されるようになったと感じた。ディスプレイのバックライトを白単色から赤色・緑色蛍光体へと変更したことで、25%多くの色を表示できるようになったという。
4096×2304ピクセルは、4Kの映像をドットバイドットで表示しても上下左右に作業領域が生まれ、フル解像度で4Kを表示させながら、編集作業も効率的に行えるようになった。写真や映像編集では、より精密に確認しながらの作業を行うことができるはずだ。
しかし21.5インチの4K解像度を持つディスプレイを目の前にした時、その恩恵はクリエイティブ領域だけではない。あらかじめインストールされているOS X El Capitanで新たに搭載された「画面分割」機能は、縦長の文書を多用するビジネスの現場でも、効率性を発揮してくれる。
例えば、Microsoft WordやAppleのPagesでワープロ文書を作成中に、グラフを作成して入れたい場合。ワープロアプリ内でも表やグラフを作成できるが、Microsoft ExcelやAppleのNumbersといった表計算アプリの方が素早く作成できる。
その際に、広い画面を生かし、例えば左側にワープロアプリ、右側に表計算アプリを配置して、表計算アプリで編集したグラフをワープロに調整しながら貼り付ける、といったフローが可能となる。いずれもきちんと可読性を確保しつつ、頻繁にアプリを行き来する作業に集中できる体験は、ノート中心の筆者にとって新鮮であり、快適だった。
例えば、ウェブブラウザとノートアプリを開いて、リサーチをしたり、素材を集めてプレゼン作成をしたり、組み合わせごとにワークフローが生まれる点も、Macを利用する新たな魅力となるだろう。
さて、筆者が試した標準構成の21.5インチのiMac Retina 4Kディスプレイモデルで1つ、大きな問題点があるとすれば、動作が「遅い」と感じたことだ。
システムの起動や、アプリの起動については、筆者が持っている2012年モデルのMacBook Pro 15インチRetinaディスプレイモデルよりも、数秒ずつ遅れていく点がストレスになっていく。アプリが起動してしまえば、そこは最新のCPUらしくきびきびと動くのだが、立ち上がりの遅さは気になるレベルだった。
その原因となっているのはストレージだと考えている。iMac 21.5インチの標準構成には、5200rpmの1TバイトのHDDが搭載されており、筆者のMacBook Proは数世代前のものではあるがフラッシュストレージだ。この読み込みスピードの差が、ストレスになっていると考えられる。
そのため、もし21.5インチのiMacを検討するならば、少なくとも1Tバイト、できれば2TバイトのFusion Driveにカスタマイズすべきだ。
Fusion Driveは、大容量のHDDと、高速のフラッシュストレージを組み合わせたドライブで、システム、頻繁に使うアプリやファイルをフラッシュストレージに移してパフォーマンスを高める仕組みを採用している。
1Tバイト Fusion Drive(プラス1万2000円、税別)には24Gバイトのフラッシュストレージ、2TバイトのFusion Drive(プラス3万6000円、税別)には128Gバイトのフラッシュストレージがそれぞれ搭載されており、作業ファイルまで含めて高速化したい場合は後者の2Tバイトモデルを選択すべきだろう。
クリエイティブにもビジネスにも、Retina化された21.5インチのiMacが活躍する場は広がるだろう。特にオフィスや自宅などでデスクスペースの小さい日本においては、27インチモデルよりも設置しやすく、価格も抑えられた21.5インチモデルは重宝することになるだろう。
また筆者はこれまでノート型Macを主体に利用してきたため、iMacを検討することはコンピュータ環境全体を見直すきっかけにもなった。
快適でパワフルかつ広い画面を扱える、魅力的なデスクトップがデスクにあるなら、出先では例えばより小さく軽いMacBookを選択しても困らないだろう。あるいは、12.9インチのiPad Proは、MacBookの代わりのモバイルマシンとして利用できるだけでなく、デスクでもタッチデバイスとして新たなワークフローに組み込むことができるはずだ。
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