(1)難民受け入れ、日本はどうすべきか--国際報道部・鈴木暁子記者
難民の取材にかかわっていますが、紛争や差別などから逃げるため、国境をこえて海外へむかう難民の人たちが世界中で増えています。ヨーロッパでは中東やアフリカからたくさんの難民が押し寄せています。日本でも昨年1年間で過去最多の5千人が難民認定申請しました。しかし、受け入れは1年で11人にとどまっています。いろいろな意見があり、日本の場合、ただ仕事目当てにきているのでは、との見方がある一方、本当に救いの手をさしのべるべき人が難民に認定されていない、という意見もあります。受け入れをもっとすべきかどうかを含めてもっと議論が必要ではないでしょうか。
言葉の壁、コミュニケーションの難しさ、仕事が見つけにくいなどの課題もあるなか、日本に定住しようとする難民の人たちとともに日本で生きていくにはどんなことが必要なのか、難民とどうかかわっていったらいいのでしょうか。皆さんとぜひ話し合ってみたいと思います。
(2)持続可能な農業をどう実現するか--社会部・渡邉洋介記者
ふだん農林水産省の取材をしていて今、農業が非常に厳しい状況に置かれ、高齢化や後継者不足が深刻であることを実感しています。都市部よりも高齢化と人口減少が先行し、耕作放棄地が急増している農村。長年指摘されてきたことがいよいよ現実になろうとしています。
一方、日本国内の食料自給率はカロリーベースで39%。いざという時にどれだけ食料がまかなえるかを示す「食料自給力」も、バランスのとれた食事をとろうとすると必要量の7割しかまかなえない現状です。加えてTPP交渉や農業改革なども議論され、日本の農業は大きな転換期を迎えています。皆さんの生活、食卓とも密接に関連している農業。持続可能な農業をどう実現してゆくべきなのか、一緒に考えてみましょう。
(3)野生動物との共存の道をさぐる--科学医療部・合田禄記者
日本中でシカやイノシシ、サルが増えています。ニホンジカは261万頭(北海道のぞく)いると推定され、このままだと2025年には500万頭になるそうです。作物を食べ尽くされたり、生態系を壊したり、電車と衝突したりと深刻な問題も起き、数百億円の税金が対策に充てられています。そもそも日本人は昔から、農作物や生息場所をめぐって野生動物との戦いを続けてきました。庶民の食料源として乱獲され、大幅に生息数が減った時代もありました。
いまはその逆で、野生動物の「反乱」の時代です。この反乱の時代から、どのように「共存」の時代にしてゆくのか。野生動物の数が少なすぎても困るし、多すぎても困る。どのように適正な数を保つか。数を減らせないなか、最近では捕獲をビジネスとして行おうという試みもありますが、まだ道半ばです。共存の新たな道を我々も模索してみませんか。
(4)民意を反映させる政治システムとは--政治部・藤原慎一記者
有権者の民意が果たして政治に今、反映されているのかどうかを考えてみましょう。政治は一瞬先は闇といいますが、そうした政局に絡め取られてしまっていて、果たして皆さんが政治家に託している「思い」が、本当に政治に反映されているのでしょうか。特に今、原発再稼働や安全保障関連法案に対して国会の周りではデモ活動が、若い女性からお母さん、学生にまで広がっています。しかし、このデモ活動の「声」はなかなか政治に反映されていない。むしろ、政治に反映されていないからこそ、皆さんがデモされているのでは、とさえ思われます。
日本では議会制民主主義で、選挙で選ばれた政治家にしか政治に直接かかわれないことになっていますが、そもそも、「民意が反映されていない」という皆さんの声を政治に反映させるにはどうしたらいいのでしょうか。私には答えは見つかっていません。よりよく民意を反映するためにどういう政治システムが可能なんだろう。肩の力を抜きながら皆さんと考えてみたいと思います。
(5)障害者と共に生きる社会を考える--経済部・安井孝之編集委員
知的障害や重度の身体障害などを抱える障害者が発する声は、私たちの社会の中では小さく、その声に社会が振り向くことは残念ながらあまりありません。新聞に登場するのも、介護施設などで虐待を受け、事件になった際に記事化されるぐらいで、障害者の暮らしの問題点が具体的に指摘されることは少ないですね。社会保障費の削減が待ったなしという財政状況のもとで、切り捨てられる恐れもある。障害者を社会の中でどう育み、見守るかは、日本が本当の意味で先進国になり得るのか、の試金石だと思います。
現状は、障害者を対象にしたグループホームづくりでも近隣住民から「迷惑施設は困る」という反対があるなど社会の受け入れ態勢は整わず、法律で定められている障害者雇用も法定雇用率(2%)を達成している企業は半数に満たないのです。この現状をどう変えるか。財政が厳しいなら、ソーシャル・インパクト・ボンドといった新しい資金調達手段の活用も検討し、あらゆる知恵を絞って解決策を示してみたいです。
(6)老後破綻のない社会をどうつくるか--経済部・松浦新記者
今、社会保障の取材に重点を置いています。老後に不安をもつ人がふえています。 高齢化で社会補償費用は増えていますが、生活保護世帯数も増え続けています。その半数が高齢者世帯です。一昨年、デイサービス施設で泊まってしまう、ふつうの民家でお年寄りたちが雑魚寝状態になっている、そんな現実を知り、取材を始めました。高齢者の置かれている状況は、自分の思い描いてきた「老後」とは違う、厳しい現実を考えるようになりました。
格差問題としても見過ごせません。年金も年々減りつつあります。70歳以上の相対的貧困率は20%を超えており、高齢者の格差は深刻です。国民年金だけでは、病気になったら生活が続けられません。老後の生活を少しでも恵まれたものにするにはどうしてゆけばいいか、議論する場にしたいと思います。
(7)性的マイノリティーが生きやすい社会とは--社会部・藤原学思記者
私が皆さんと一緒に考えたいのは、LGBT、性的マイノリテイの方がどうしたら生きやすい社会が実現できるのかです。私が取材担当している渋谷区では今年4月、同性パートナーシップ条例が成立しました。さらに世田谷区でも同様の動きがあります。皆さんはSNSを使っていると思いますが、6月に米国連邦最高裁の同性婚を認める判決が出た時に、フェイスブックのユーザーのトップ画面がレインボーマークに染まりましたね。
日本でも性的マイノリテイの方が少しずつですが、認知されるようにはなりましたが、「理解」や「受容」が進んでいるかというと、そうではないような気がします。少なくない差別や偏見が私たちの社会にはあるのではないでしょうか。何をどうしたら彼・彼女が住みやすいと思ってもらえる社会が実現できるのか、皆さんと考えてみたいと思います。
(8)ニュースとテクノロジーの新しい関係--メディアラボ・竹下隆一郎主査
今年夏までアメリカに留学していました。1年間の滞在中、日本の新聞は読まなかったのですが、特に困ることはありませんでした――ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアで日々流れてくる記事を読めば、日本で何が起こっているかを知ることができたからです。ソーシャルメディアでは記事を紹介した人の「コメント」も付いてくるので、新聞記事を読む以上に深くニュースを理解することもできます。コンピューターで大量のデータが手に入ったり、ドローンで映像が撮れたり、人工知能が記事の執筆・編集を担ったり、新しい技術によってメディアは大きな影響を受けることになります。
ニュースとテクノロジー。この二つが組み合わさった新しいメディアの時代を「ニュース・テックの時代」と呼ぶことにしたい、と思います。テクノロジーによって、メディアをどう変えられるか。どう変えたいか。来年、あるいは5年後、10年後、20年後にメディアはどのような形になっているか。みなさんとテクノロジーとメディアの新しい関係を考え、その問題点もあぶり出したいと思います。もし画期的なアイデアがあれば、エンジニアの方に頼んで試験的なニュースアプリを作るのも良いかもしれません。発想は自由です。ご参加をお待ちしております。
(9)途上国への新しいお金の流れを探る--報道局ソーシャルメディアエディター--藤谷健記者
今年は「地球上から貧困や感染症などをなくそう」という国際的な公約「ミレニアム開発目標(MDGs)」の最終年度でした。9月の国連総会では、MDGsに代わり、新たに「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されます。この間、様々な努力がなされ、MDGsは一定の成果を上げたとの評価があります。
この間起きたもう一つの特徴的な動きとしては、こうした取り組みを支える資金に変化が生まれていることがあります。国際社会は、長い間、途上国援助(ODA)といった公的な資金を、途上国の抱える課題解決の取り組みの中心に据えてきました。しかし世界的な経済停滞や小さな政府を求める世論などから、ODAは減少傾向が続いています。そこを補完する形で、マイクロファイナンスで代表される小規模投資や社会投資、あるいは寄付といった「民」の資金が重要な役割を果たすようになってきました。
この流れでのキーフレーズは「施し」から「共生」へ。一方的にお金をあげるのではなく、「私たち」と「彼ら・彼女ら」が一緒に考え、お金を通じて、新しい対等な関係性を築くというパラダイムの転換が生まれているように思えます。ただ残念なことに、欧米諸国に比べると、日本ではこうした民間資金への理解や取り組みが遅れています。みなさんと、どのような新しいお金の流れが作れるのか、そして日本に住む私たちと途上国に住む彼ら・彼女らとがどのような関係をつくるのか。さまざまな面から議論したいと考えています。
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