朝日新聞社は2月14日、参加者がメディアを使って記者とともに社会課題の解決に挑む「未来メディア塾 イノベーション・キャンプ」の成果発表会を開催した。1月25日のワークショップで結成された10チームが、チームごとに設定した社会課題に対して、3週間にわたるフィールドワークを通して考えたアイデアをスライドや映像を使ってプレゼンした。
各チームが掘り下げたテーマと具体的な解決策は次の通り。テーマの詳細は前回記事を参照のこと。
解決策:東京一極集中の状態から、地方がいかに自立できるかを考えた。各自治体の課題の発見/解決ができるプラットフォームを制作する。事業を拡大させるために、NPOや商工会などと連携する。ここで得たビッグデータは、今後の施策に活用する。
現実のデータを利用した、街作りシミュレーションゲームを制作。無料アプリで提供する。ターゲットは、特定の街に住む子どもや若者。自分が実際の地域の町長や自治会長となり、さまざまな施策を講じたり、住民とコミュニケーションをとることで、空き家を減らす。ゴールは、地域の「幸福度」を最大まで上げること。空き家問題の本質である“コミュニティ作り”を学べる内容にする。
フィールドワークを通して、投票率が下がっている原因として、地域のコミュニティ機能が低下していることがわかった。「出会いは総選挙」をテーマに、選挙に無関心な20~30代の若者に対して、選挙の投票日に各地域の投票所で、同窓会や街コンのようなイベントを開く。主催者は地元の若手経営者団体などを想定。
住環境のリスクに着目。引っ越しのポータルサイトを作り、街のデータと住民の体験談を掲載する。また、自治体や国が発表している、分散されたリスクデータを一箇所にまとめる。引っ越しを考えている人と不動産事業者とのマッチング、自治体へのコンサルティングなどの展開も考えられる。
病院に行かなくてもいい社会を目指す。フィールドワークを通して、生活習慣病の重症化を防ぐことが最もメリットのある方法だとわかった。社員の健康促進に注力しているすかいらーくを取材した。同社は実際に効果を上げているが、追随する企業がいないという。同じモデル+αを新聞社が取り入れ、健康のムーブメントを起こす。
新たな奨学金支援制度として、アバターを使った学生育成ゲームを考案した。学生は、学校での成績や学外活動の情報(スキルセット)をもとにアバターを制作。プレイヤーはそのスキルセットを見て好きなアバター(支援対象の学生)を選び、成長させる。ゲームは民間企業が運営。奨学金は返済リスクのない給付型とする。
「共感と信頼」をキーワードとした“共感投資取引所”を創設。NPO投資や寄付などの社会的投資を通じて社会課題を解決できる仕組みを作る。
人々が自分にとって最高だと思う働き方を選べる社会を目指す。企業の労働環境や働きやすさを知れる(可視化する)仕組みが必要。ウェアラブルデバイスを活用して各社の従業員の“ハピネス度”を計測、労働条件などの情報と掛け合わせて、新聞やスマートフォンアプリを使って結果を発表する。
ワークライフ・アンバランスはテクノロジの進化により解消できるようになる。2020年には、仕事量の可視化や、活動量に余裕のある人との仕事のシェアリングなどを可能にするスマートグラスが登場するのではないか。
「給食」をきっかけに、自分ごととして考えられるようにする。世界各国の料理を学校給食で供給し、メディアやテクノロジを活用したワークショップをパッケージングする。生産者情報を読み取れるARコード付きのお品書きを出したり、スマートグラスを活用した、ガーナの街中を疑似体験できるようなコンテンツを作る。
当日は「アイデアの革新性」「実現・実行性」「メディアを活用しているかどうか」などの視点から審査員が優秀なアイデアを表彰した。(3)低投票率と若者の政治参加、(4)リスクと上手に向き合うには、(9)ワークライフ・アンバランスを超える 両立できる社会へ――の各チームが特別賞を受賞。また、参加者全員で選ぶ賞を(4)リスクと上手に向き合うには――のチームが受賞した。
審査員は、ロフトワークの共同創業者で代表取締役の林千晶氏、朝日新聞社 編成局長補佐の原真人氏、CNET Japan編集長の別井貴志の3人が務めた。
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