“記憶に残したいものを商品化する活動”を続けてパリス氏が行き着いたのが「地元愛を記憶に残す商品」だった。同氏は「地元愛」を表現するために「メリーランド州旗」をデザインに取り入れることをひらめく。さっそく彼女は、旗のデザインをあしらったビキニを考案。試しに1000着つくって販売すると、すぐに完売した。
州旗のデザインのTシャツや帽子などもラインアップに加え、Facebookなどで宣伝するようになると、商品には「メリーランド州のことを誇りに思うわ」「メリーランド州のことを愛している」といった、地元への愛情を示したレビューが次々ついていったという。
商品の説明文にも「地元愛を示したり、私たちの州旗がどれだけ美しいかを皆に思い出させることができるよ」などと書かれており、このようなちょっとした試みが、人々が抱いている地元愛に訴えかけているようだ。パリス氏は自身の成功について、次のように語っている。
「当時は、なぜ旗のデザインをアイテムに取り入れるかを理解できる人は少なかった。まだ流行になり得ることが知られる前に市場を獲得できた、と思ったわ」(パリス氏)。
Route One Apparelの成功を目の当たりにした他の企業も、地元愛を取り入れたアイテムを扱うようになった。たとえば、メリーランド州旗のデザインをあしらったマグカップ、同州の名物であるカニの殻をモチーフにしたクリスマスの装飾、そのほか、携帯電話ケースやバッグ、靴やクッキーまで、メリーランド州にちなんだアイテムが続々と出てきているそうだ。
競争が激しくなってしまった状況にも関わらず、パリス氏は頓着していない。
「私はすべての商品に州旗のデザインを用いるような仕事をやりたい訳じゃない。私たちはもう次の段階のことを考えてるのよ」(パリス氏)。
パリス氏が現時点でどのような新商品を構想しているのかは分からないが、きっとまた「人々が記憶に残したいと思っていること」を商品化してくれることだろう。
尼口 友厚
ネットコンシェルジェ
CEO
明治大学経営学部卒。米国留学からの帰国後、デザイナー/エンジニアとしての活動を経て、2002年に国内有数のウェブコンサ ルティング会社「キノトロープ」に入社。 2003年、同社関連会社としてネットコンシェルジェを設立。eコマースとブランディングを専門領域とし、100億規模の巨大ECサイトからスタートアッ プまで150を超えるクライアントを抱える。
2015年にベンチャーキャピタル2社より資金を調達し、キュレーションコマースプラットフォーム「#Cart」を開始。趣味はブラックミュージック鑑賞。著書に「なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?」(日経BP)。
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