米公開企業の決算発表には手順がある。まず四半期の決算なら証券取引委員会(SEC)の様式10-Q、年次決算なら同じく様式10-KをSECのエドガー・サイトに届け出る、同時に専門の配信サービスを使ってプレスリリースを発表する。
その後、電話会議(カンフェランス・コール)でアナリスト・投資家向けに説明会を行う。これが一般的なやり方だ。電話会議は、はじめに経営トップが決算の概要を説明し、この後、質疑応答になる。やり取りはライブで各社のウェブサイトで聞ける。
四半期に1回の説明会だけに、経営者の説明は事前原稿の棒読みだとか、質疑応答も毎回テープの繰り返しを聞く感じでマンネリだという声も少なくない。企業レポートを書くアナリストや投資判断を下す運用担当者の中には、ライブではなく、後日サイトに掲載されたプレスリリースと電話会議のやり取りを文章にした議事録を読んですませる人もいる。
この6月、シカゴで開催された全米IR協会(NIRI)の年次大会に出かけると、IR支援最大手アイプリオ(Ipreo、www.ipreo.com)のブースに並んだ。「決算のプレスリリースの新たな動き」と題する調査レポート(PDF)がIR担当者の間でちょっとした話題になっていた。
というのも、電話会議では、経営トップによる説明時間はもっと短く、質疑応答の時間を長くしてもらいたいという声に対応する各社の取り組みが紹介されていたからだ。
例えば、動画のネット配信最大手ネットフリックスの電話会議だ。決算説明の電話会議が始まる2時間前に、業績の概要を説明する「投資家向け四半期レター」をウェブサイトにアップロードする。もちろん誰でも読める。 そして、電話会議の時間をすべて質疑応答に充てる。その時間は40~45分に及ぶ。
また、油・ガス大手デボン・エナジーも、電話会議の前夜にプレスリリースや経営幹部の説明原稿をアップロードしている。こうすれば、事前に決算説明の概要が入手できる。
これまで自社に関する基本情報に多くの質問があった。それが減り、経営の戦略などをめぐるやり取りが増えるなど、質疑の内容も向上する。これが説明原稿や決算資料を市場目線で見直すことにつながる効用をもたらす。
今、Twitterを決算発表のプレスリリース発信で利用し、そこから投資家を自社ウェブサイトにリダイレクト。関連する決算資料にアクセスを高め、拡散効果を狙うやり方は多くの米企業が採用している。不動産データベースのネット企業ジローは、その先をいく。Twitter経由でアナリストや投資家の質問を受け付けているのだ。
Twitterでハッシュタグの#ZEarningsを見ると、どんな質問があり、どんな回答があったのか、誰でも、時系列で、アナリストや投資家の反応を明快に追うことが可能だ。しかも、それは消去されることはない。
ジローのIR担当者は、決算リリースを出す前後からTwitterに載っている質問を追って、個々の質問がどんなものか、プレスリリースなどで整理が不十分なポイントを確認するのだという。その目的は、電話会議で、できるだけプロアクティブな回答を行うためだというのだ。質問するアナリストが多彩になり、数も増えたという。
日本でも四半期の決算発表となれば決算短信を東証のTDネットに届け出る。その日か翌日にアナリストや投資家が参加する説明会を行う企業は多く、配布資料はその場で渡される。説明会の始まる前に、自社のウェブサイトに配布資料をアップロードしたり、Twitterであらかじめ質問を受け付けるといった例は聞かない。
これを機会に、説明会の現状を見直してはどうだろう。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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