Microsoftの前途には、困難な課題が待ち受けている。スマートフォン分野で「Windows」の存在感を再び高めなければならない。
その課題を認識してか、世界最大のソフトウェアメーカーであるMicrosoftは米国時間6月17日、幹部陣の再編を発表した。最も注目すべき変更は、Stephen Elop氏が同社を去ることだ。Elop氏が担当していたデバイス事業(スマートフォンも含まれる)は、Terry Myerson氏の率いるOSグループに統合される。
「当社の戦略、特に中核となる3つの大望を達成するために、エンジニアリングの取り組みと能力を調整しているところだ。この変更によって、顧客に愛される優れた製品とサービスを、もっと早いペースで提供できるようになる」。Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏は、従業員に宛てた電子メールでこう語った。
今回の再編は、Microsoftがモバイル業界における存在感を強化できなかった場合に直面する危機を浮き彫りにしている。「Windows 10」OSを可能な限り多くのデバイスに搭載し、各デバイスを連係させるというアイデアを推し進めている同社にとって、モバイルにおける足がかりを強化することは不可欠だ。スマートフォンは多くの人々の暮らしにおいて最も重要なデバイスとなっており、デバイス間のシームレスなWindows体験という構想も、スマートフォンなしでは崩れ去ってしまう。
「Microsoftの組織再編には、モバイルに対する姿勢を変えるという同社の決意が表れている。また、モバイルへの取り組みはエンジニアリング面でWindowsと緊密に連係することで有利に進むだろう」。ForresterのアナリストFrank Gillett氏はこのように述べている。
多くの人は、まだWindowsフォンという概念になじみが薄い。Gartnerによると、Microsoftの「Windows Phone」OS(今後は「Windows 10 Mobile」にリブランドされる)の第1四半期の世界市場シェアは、前年をわずかに下回り、2.5%にとどまったという。一方、「Android」は市場の80%近くを占め、「iPhone」は18%のシェアを獲得している。
この課題を担当するのがMyerson氏だ。同氏は新たに創設されたWindows and Devices Groupを率い、「Windowsエコシステムの力で、さらにパーソナルなコンピューティング体験を実現する」ことに注力する。
Myerson氏へのインタビューは、Microsoftから許可が下りなかった。
一方、Windows Phoneを消費者に売り込むというElop氏の4年にわたる取り組みは、同氏の退職によって終わりを迎えることになる。その取り組みが始まった2011年当時、フィンランドの大手携帯電話メーカーNokiaのCEOだったElop氏は、MicrosoftのモバイルOSの採用という戦略転換を行い、物議を醸した。そもそもMicrosoftからNokiaに移った同氏は、Microsoftが2014年にNokiaのデバイス部門を買収したとき、古巣に戻る形となった。
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