スマートフォンネイティブが見ている世界

できなければ死んだも同じ-—中高生のインフラ「LINE」の実態 - (page 2)

利用時間の制限は一つの方法

 LINEを始める前、LINEを利用している友だちがあまりいない状態なら簡単だ。LINEを利用し始める時期を先延ばしにすればいい。ところが、年齢が進むにつれ、周囲の友だちの多くがLINEを利用し始めるようになると、話は難しくなる。

 「友だちはみんなLINEをやっている。LINEがやりたいからスマホを買って」――多くの子どもが、保護者に対してこのようにスマートフォンをねだる。初めはしぶっていた保護者も、「部活の連絡網がLINE」「クラスのLINEグループができた」などと言われるうちに、必要に駆られてスマホを購入したり、LINEの利用を許可するようになる。最近では、「PTAの連絡網がLINE」というところも多く、自らも利用している保護者は多い。

 やめどきが分からずにLINEがやめられず、睡眠や学習に悪影響が出る子が問題視されるようになってきた。そこで最近、県や市単位などで、小中学生を対象に携帯電話やスマートフォンの利用時間制限を設ける動きが広がっている。きっかけは、2014年4月に愛知県刈谷市が9時以降スマホ・携帯電話を利用禁止にしたことだ。その後も、岡山県、静岡県、福岡県春日市・福岡市・北九州市、石川県加賀市、兵庫県多可町、熊本県人吉市、山口県下関市、宮城県仙台市、広島県広島市などに利用制限は広がっている。

 この制限に特に罰則はなく、強制力があるわけではない。ところが、すでに制限した福岡県うきは市立吉井中学校が同校生徒に実態調査をしたところ、約3割以上が「ぐっすり眠れるようになった」、約4割が「学校で友達との会話が増えた」と回答するなど、子ども達の間でも利用時間の制限に対する評判は上々だという。やめどきが分からずに困っていた子どもたちに、やめる言い訳として歓迎されたというところだろう。

 このような制限が効かない子も多いし、どの地域でも設けられているわけではない。しかし、たとえばPTAの発信で制限を設けたところもあり、制限がない地域でも学校単位やクラス単位などで設けることもできる。一つの方法として検討してもいいかもしれない。

「LINEが諸悪の根源」ではない

 「LINE」がタイトルにつく事件記事を見ることが増えた。そのような事件の中には、LINEのコミュニケーションが元となって起きた事件もあるが、LINEはまったく関係ないものも多く含まれている。LINEがコミュニケーションのインフラと化したということだろう。

 言うまでもないが、LINEが諸悪の根源というわけではない。LINEをやめても、場所を変えてまた同じ問題が起きるだけのことだろう。問題は使う人にあり、コミュニケーション自体にある。

 今後当連載では、スマホネイティブ世代のSNSなどの利用実態とともに、問題点や対策などを取り上げていきたいと思う。知りたいことや問題意識、感想などを教えていただけると幸いだ。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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