「楽天市場」サウンドハウス撤退騒動--楽天の説明と憤る他店舗オーナーの証言

井指啓吾 (編集部)2014年11月22日 15時30分

 11月19日、音楽用品のECサイトを運営するサウンドハウスが楽天の一施策を強く批判し、楽天市場への出店を取りやめることを発表した。楽天は「事実確認中」としながらも、両社の担当者が9月頃、同時期に退職しており、その引き継ぎの過程において、必要な情報が伝達されなかったか、または誤った情報が伝達された可能性があると説明した。

  • 楽天による施策(振込先口座一本化)の説明

 サウンドハウスが怒りをあらわにしたのは、楽天が11月13日から順次、楽天市場出店店舗の振込口座を「楽天銀行 楽天市場支店」に変更していることだ。各店舗の振込口座は楽天が開設し、すべての口座の権利を楽天が保有するかたちで運用する。店舗の口座自体が変更される、また他行の銀行口座が使えなくなるということではなく、楽天が開設した楽天銀行の振込口座から、店舗の既存口座に送金できる仕組みだ。

 楽天はその狙いを、決済の窓口となることで決済代金の流れを確認し「詐欺サイトへの振込みを防ぐこと」であり、同社はこれを現在推進している安心・安全の取り組み(ユーザー保護)としている。しかし、この騒動が起こってから、「楽天はユーザー保護をうたっているが、本当の目的は楽天銀行に口座を作ることで利益を得ることではないか」との声が挙がっている。

 本稿ではまずこの点について、楽天から得た情報を交えながら説明したい。

 楽天市場での商品購入時に代金を振り込む場合、その手数料は楽天銀行ではなく、購入者である自分が口座を開いている銀行に支払うことになる。たとえば筆者は三菱東京UFJ銀行を利用しているので、三菱東京UFJ銀行に手数料を支払うわけだ。よって、このタイミングでは楽天側に手数料収入は生まれない。

 次に、この施策により、店舗側は購入者から楽天銀行口座に振り込まれた代金(売上)を、従来使っていた銀行の口座に送金する場合に、10日と25日以外は手数料309円がかかることになり、こちらは楽天銀行の収入となる。これについては、これまでより楽天が新たな収入を得ることになる。

 また、この他にも楽天側の利益として、(1)楽天銀行の口座数を増やすため、現金残高が増える、(2)楽天銀行は同行口座宛であれば振込金額にかかわらず手数料が無料であるため、商品購入時に手数料を支払いたくない他行利用中の購入者(消費者)が、新たに楽天銀行に口座を開く可能性が高まることなどが考えられる。

 これらについて楽天は、「楽天市場における決済方法の主流は、カード決済と代引き。銀行振込は全体のわずか数%となっている」とし、あくまでも偽サイトによる詐欺などの犯罪行為から、購入者を保護する取り組みだとする。また、全店舗分の口座数が加わった場合にも、その割合は楽天銀行の全口座数において1%程度増加するだけで、楽天グループの収益には直接結びつかないという。

 なお、店舗の契約上の登録口座が楽天銀行の場合には送金手数料は無料となり、購入者からの入金日の翌銀行営業日の日次振り込みとなる。登録口座が他行の場合は、手数料無料で楽天銀行から毎月10日と25日に指定の口座に振り込まれる。またこの指定日以外で日次振込を希望する場合は、前述の通り毎月10日と25日以外は手数料309円がかかるが、2015年1月31日までは毎月4回まで振込み手数料を無料にしているという。

 しかし、「あくまでも、偽サイトによる詐欺などの犯罪行為からユーザーを保護する取り組み」(楽天)というように、今回の施策はユーザー保護を優先しているため、何らかの事情で極端に送金回数の多い店舗にとっては今後大きな手数料負担となる可能性がある。

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